どうにもできないことばかり


気分が悪くなったから、保健室へいった。扉をあけると誰もいなかった。保健室の匂いは嫌いだ。病院を思い出す。ベッドのシーツの色も、全部黒にしてしまえばいいと思った。勝手に勝手に休もうと思い、ベッドへ足を向けた。誰かがいる。僕はカーテンの隙間からベッドを覗いてみた。彼女だった。僕が、思いを寄せる彼女。感動した。何かの運命の巡り合いかとおもった。大袈裟だが。彼女はいつも、あの胸糞悪い彼氏にべったりとくっつかれているから、こんな風に二人きりになれるのはこれこそ奇跡だ。ゆっくりと彼女に近づいた。茶色い、透き通るような長い髪を、手ですくった。きらきらと光っていて眩しかった。彼女の長いまつげとか、唇とか、胸元とかみてたらなんだか変な気分になった。思わずブラウスのボタンに手がかかる。プチ、プチ、と一つずつ、ゆっくりと外していく。比例して僕の心臓は高鳴りを増した。どきん、一瞬、違う心臓の音がした。僕は直ぐに手を外し、カーテンの外へでて、保健室から出ていった。彼女の胸には、多数の赤い斑点があった。それをみた瞬間、一気に虚しくなった。見事な男よけだと思った。ペタペタと、マヌケな足音を立てながら誰もいない廊下をあるく。ああ、温もりが、欲しい。一瞬、一瞬だけでもよかったのに、君は僕から遠ざかる。


どうにもできないことばかり



20110721.




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