一人
うーん、全国大会はめでたいことなんだけど、一週間東京かあ。一週間、一週間。これは…なんかいろいろとやばいんじゃないのかなあ。今日も学校が終わって、放課後教室で全国大会の要項を眺めていたら、騒がしい声が聞こえてきた
「男装時ー！」
「お、謙也」
「今日部活休みやし一緒に帰らへん？」
「あー…うん、いいよ」
「よっしゃ！ほないこか」
「待って、白石君は？」
「白石？ああ、あいつは委員会行ってるんちゃう？」
「あ、そっか」
「…待ってる？」
「へ？」
「白石」
「…あ、いや、いいよ。今日はいい」
「…じゃ、かえろか！」
「うん」
白石君が、ホモじゃないとわかってから、なんかどう付き合えばいいのかわからなくなってきていた。一応、白石君が私のことを、あの春休みの時に会った女の子だって、気づいてくれたら、本当に一番いいんだけど…でも、そのためだけに男装して、もし白石君が私を探そうとか考えてなかったら、
「ただの一人芝居…」
「え？なんて？」
「ううん、なんでも」
みじめだ
白石君の前で男のフリをするのは本当に虚しくなる
「な、ななななあ、男装時」
「ん？なんだ？」
「ら、来週の、全国大会…た、楽しみやな！」
「え、…ああ、うん、そだな」
「お、俺！」
「え？」
ガシリと謙也に両肩を掴まれる。わ、なんだなんだ！
「…俺、お前のために試合がんばるわ」
「………俺？」
謙也が真剣な目で見つめてきたから、私もじっと見つめてみる
「（か…っかわええ…）」
「…謙也…お前…結構熱血なんだな」
「…え…」
「俺もみんなには優勝してほしいし、マネージャーがんばるよ」
「…お…おん（なんか違う）」
うん、がんばろう。男装ばれるかもとかいろいろ不安要素あるけど、がんばろう！私にできることをしよう！
▽
「…いない、か」
委員会終わって、教室に戻るとそこには見事に誰もいなかった。委員会行くときは、苗字はまだ机にすわっとったんになあ
「……」
あかん、あかんわ。最近の俺はどうやら苗字がクセになってしまっている。試合終わった後の、あいつが笑顔でタオル持ってきてくれたり、ドリンクくれたり、なんや結構俺に懐いてくれとるんやないかとか思ってまう。そんで知らんうちに、あいつを求める俺がいる…
あかんわ！！
「…俺、あいつのこと犬とでも思っとんのかな…」
ま、しゃーないし今日は一人で帰るか