さようなら




女だけど、男






これがどこまでも私に付きまとっていた。気づくと、男になりすぎてて、女だってことを忘れる。女だって気づいた途端、もっと男になりたくなる






そんな心理状態の中で、男として皆に接しなきゃって思うのに、千歳は自分が女だってことを忘れるなって言う。千歳はなんにも間違ってない。だけど、イライラするんだ。








難しくて、できないから















目が覚めると、もう部屋には誰もいなかった。お腹は、さっきよりもましになった。








「…もう、潮時なのかな…」







男装するのも、もう、限界、なのかなって思った。心が弱ってるからなのかな、実際もう男装する理由はないしね。白石君、ホモじゃないし。自分のエゴでやってることだから、やるやめるも自由だろう







「…どうしよっかな、」








もうどの部屋も皆からっぽだった。皆、決勝を見に行ったんだろう。






「…少し、休憩しようかな、」






一時休戦、それも悪くないと思った。
















プルルル




「あ、男装時から電話や」
「え」




今から決勝が始まるというピリピリした空気の中で、謙也の携帯がなる。苗字、お腹冷やしたとか、大丈夫かいな。なんで外でねてたんやろ?




「ああ男装時?おん、え?今から?」
「……?」



謙也の声色が変わる。なんやろ




「え。ほんまに?あ、今白石に代わるわ」
「え」
「白石、男装時から」
「…もしもし?」
『あ、白石君?』
「おん、腹大丈夫なん?」
『うん、大丈夫。…あのさ、今家から電話きてさー』
「おん」
『家の用事で帰ってこいって言われてさ。だから先に大阪帰るな』
「え、ほんまに?」
『うん、なんか緊急っぽかったし、ごめんな、最後までいられなくて』
「いや、しゃーないやん、俺らの試合は全部おってくれたしええよ」
『ごめん、ごめんね、…じゃ、またメールするよ』
「おー…」




プツ



切れた。




「ほんまに男装時先に帰るん?」
「ああ、家の用事じゃしゃーないな」
「え〜めっちゃさみしいわ」
「うっさいホモ」
「な…!」




はあ、俺も人のこと言えんわ











ピ、




電話を切る。嘘、言っちゃった…。別に家の用事なんてなんにもない。ただ、先に帰りたかっただけ。もう、この茶番みたいな男装を解きたかった





「…帰ろう」




荷物を持って、部屋を出る。





家に着いたら、お母さんといろんなこと、話そう。それで、フワフワのワンピース来て、一回女の子に戻ろう。








バイバイ、男装時。


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