おかしいぞ
そんなこんなでもう全国大会三日目。今日は不動峰戦。千歳がやけにはりきってて、私が起きた時にはもう顔を洗っていた。
「…うはよう…」
「はは、おーはーよ」
「…おはよう…」
「寝ぼけとっと?」
「うっさいー…」
目をこすりながら私も顔を洗うために洗面台に向かう。
「はー、よく寝たなあ」
「いびき、かいとったばい」
「え!?」
「うそー」
「むっかあ」
ボス!っと千歳を殴ったがびくともしなかった。この巨人め!
「名前」
「…!」
千歳が、私をほんとの名前で呼ぶときは、いつもドキっとしてしまう。
「俺、今日がんばるたい」
「う、ん」
「応援、よろしく」
「うん…がんばるよ」
なんか、変な千歳だなー
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不動峰って、すごい真っ黒!なジャージ!暑くないのかな、とか思いながら、不動峰の人と、四天宝寺の人がコートへ整列するのを眺める。コートの周りには、青学の人たちがいた。(ユウジにジャージの色と名前を一致させるために教わった)
「…みんな、がんばってね」
なんだか今日は千歳が妙に真剣だったから、本当に本当に、私も心配してたんだけど、試合が始まればみんなはいつも通りで、余裕勝ちしていた。
「遠山君も、石田君も謙也も、みんなすごいなあ…」
そして迎えた千歳の試合。なんだかこの試合だけやけに空気が違って…
「…え?」
周りの人のつぶやきで、なにか見えてきたものがある。千歳が九州からの転校生で、転校した理由は目のケガ、それでその原因はあの不動峰の、橘君…
「え…?え…?」
私って、
もしかして
千歳のこと、なんにも知らなかった…?
『ゲームセット!四天宝寺千歳!』
なんだか、白熱した試合すぎて、私目で追っかけるので精いっぱいだった。気づいたら、もう終わってた。千歳、勝ったんだ
「…ち、とせ」
「男装時」
「…おめでと…」
「…ん、ありがとさん」
千歳にタオルを渡したら、笑顔で返された。
なんだろう、この違和感は