恋してるんだよ
その夜、私はなんとか一晩過ごし、朝は7時に起きた。今日の試合は午後から、よしよし、いい朝だ。隣では、千歳がぐぅぐぅ寝ている。うん、もう少しほっとこう。
ガチャ
廊下に出ると、むこうに私の大大大好きな人が見える。白石君だ!
「白石君ー!」
「お、苗字やん」
「おはよう!」
「おはよーさん、早いな」
「白石君もね」
「ちょっと緊張してもうてな、」
「緊張?」
そっか、今日は全国大会初日。緊張するにきまってるよ。
「…白石君、俺、がんばってみんなサポートするから!それで、白石君の試合が終わったら、一番にドリンクとタオル持ってくから!…だから、その、がんばれっていうか、いやもう白石君は十分にがんばってるんだけど、えーっと・・」
ああ、励ますつもりがうまくまとまらなくなってきた。がんばれって言葉がいかに便利な言葉なのか理解した。白石君はそんな私を、きょとんとした顔をしながら、見ている、あああ、どうしよ、
ぐい!
「…っ、え?」
「…ありがとう、苗字」
白石君は、一瞬だけ、私をひきよせて、抱きついた。わ、わーー!白石君のっいいにおいが!あったかい体温が!わーわーわー!
「よっしゃ、休憩おわり」
「…へ?」
白石君は案外普通に離れていく。少し名残惜しい…
「ありがとうな、元気出たわ、ほんまに苗字がおってよかった」
「え…ほんと…?」
「おん、ほんまやで」
私は頬が緩むのがわかった。自然と私が笑顔になると、白石君もニコ、と笑ってくれた。この、じんわりと感じる思い、嗚呼やっぱりこれは恋だ。
「俺、前も言ったと思うけど白石君がテニスしてるのが大好きなんだ!ずっと応援してるからな!」
「…へ…」
白石君がなんかビックリした顔してたけど、ちょっと照れ臭くなって、私はその場を飛び出した。よし、千歳にこの恥ずかしさをぶつけてやろう。
へへ、白石君が大好きだ