さよなら、あなた



ガラ



「失礼します」









俺を追い掛けて、丸井や柳たちが病室に入ってきた。俺はなんとか平然を装うとした







「仁王、苗字の容態は…」







返事ができなかった。顔色は誤魔化せても、心までは誤魔化せなかった。柳たちはゆっくりとベッドに近づく。すると、弱々しい声が病室に響いた








「…あなたたちは、誰?」








俺に向けられた言葉じゃなかったのに、なんだかひどく胸が痛んだ。顔をあげられなかった。もう、どうしたらいいのかわからなかった








「ちょ、何言ってんだよい、俺はお前のクラスメイトの丸井ブン太!こっちは柳だよ!後ろのハゲとかも、覚えてるだろ!?」












名前は虚ろな目を俺たちの後ろに向けた。動揺しているジャッカルや真田たちを見る。少しだけ名前が目を見開いたのがわかった









「…あ…ジャッカル、くん」









弱々しい声が呼んだのは、ジャッカルの名前。どうやら、ジャッカルのことは覚えているようだった。そういえば、このメンバーの中で一番名前に絡みがなかったのはジャッカルだった気がする










「大切なものほど、か」










俺の中で、なにかが整理された。どうやら名前は、自分にとって大切なものほど、記憶を無くしてしまったらしい





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