絶望の雨が降る
「記憶が無くなったらしいの」
そう名前のお母さんが告げる。その声は絶望からか、やけに落ち着いていた。
記憶が、無くなった…?
「覚えてることもあるの、私生活に必要なこととか」
名前が俺の記憶を無くした?
「でも、大切なことを忘れてるの。自分の名前とか、私達や雅治くんとか…学校の友達とか」
名前が俺を、忘れた…
「自分にとって大切なものほど、よく忘れてるの」
呼吸が、はやくなるのがわかった。体も震えていた。頭の中がぐちゃぐちゃになった。名前が記憶喪失になった。俺のことを忘れた。もう、名前の中に俺はいない。
もう、いない