世界が壊れる音がした
バタバタバタ
しんとした病院の廊下を駈け抜ける。周りなんて見えてなかった。ただひたすら、柳に教えられた病室へと走った。病室の前までくると、俺は乱れた呼吸を整えて、静かに戸をあけた。
「…失礼、します」
真っ白の部屋には、真っ白のベッドが一つ。そのまわりには名前の両親がいて。ベッドには頭を包帯でまいた名前が座っていた。見たところ、怪我は頭だけのように見えた。だが、部屋の雰囲気が悪い。名前の両親は俺に気が付くと、何か気まずそうに声をかけてきた
「…ま、雅治くん、来てくれたのね」
「あの、名前の怪我は…」
「……そのことなんだけど」
再びピリ、とした雰囲気が漂った。ベッドへ目を移すと、ゆっくりと生気のない顔で俺の方を向く名前がいた。
「名前、大丈夫か?」
俺の言葉に、名前は返事をしなかった。ぼうっと、ただ俺の方を見つめていた
「…名前…?」
「…誰?」
世界が壊れる音がした