理解不能な現実
早朝。朝練はなかったが、俺は朝早く学校にきた。朝は人が少なく、空気も澄んでいる。ほんのり香る潮の匂いを嗅ぎながら、階段を昇る。
バタバタ
「…苗字?」
バタバタ走りながら俺を抜かして行ったと思ったら、苗字だった
「あ、柳じゃん、おはよ!」
「…………?お前、」
「何?あ、今日はねえ、やけに頭が冴えてたから早くきたの!」
「戻ったのか?記憶が」
事故って記憶がなくなってから、こいつは俺を「柳くん」と呼んでいた。最初は違和感を感じたが、今では慣れてしまい、逆に「柳」と呼ばれると変な感じがした。それはそうと、なんでこいつは急に記憶が戻ったんだ?
「…記憶って…何の話?」
「…!」
なんだ?意味がわからない。理解が出来なかった。
「お前、丸井はわかるか?」
「え、ブン太?」
「柳生は、真田は…!」
「うん、柳生くんと真田くんでしょ」
「………仁王は」
「…仁王…?」
ピシ、と胸に痛みが走る。一体こいつの記憶はどうなっているんだ。一体、何が、何が起こっているんだ、もはやデータなどあてにならなかった