心の境界線






「あー、雨降ってきちゃった」








ザアザアとふる雨をみて、名前が残念そうに声を漏らした。







「今日、なんかあったん?」
「ううん、傘忘れたの」
「傘?」







あんだけお天気お姉さんが傘は絶対持ってけっつっとったんに、何しとるんじゃこいつは







「早くやまないかな」
「あほ、止むわけないじゃろ」
「う…」
「仕方ないのう、これ使いんしゃい」
「…え」








俺はごそごそと鞄から折り畳み傘を取り出す。名前はびっくりした顔をしていた







「いい、仁王くんが濡れちゃう」
「俺は濡れても構わないぜよ」
「だめ、そんなのだめ」






名前の気迫に押されて、俺は差し出した傘を引っ込めた。少し悲しそうな素振りをみせると、名前は一気に慌てだす








「あ、あの、違うの、使いたくないとかじゃなくて」
「じゃ、使いんしゃい」
「…………そうだ!」






名前はなにか閃いたようにバッと顔を上げた








「一緒に入っていこう?それなら平気だよ」
「…え」
「あっ、少し肩が濡れちゃうかもしれないけど………だめかな?」
「………付き合ってるとか思われるぜよ」
「…………あたしは仁王くんとなら別にいいよ」











どきん、










よくわからない鼓動が鳴った。ときめきでもなく、驚きでもなく。








「あ、仁王くんが迷惑だよね、ごめん」
「………いこ」
「…仁王くん…?」







俺は名前と目を合わせないように傘を開いた。2人で相傘するのは久しぶり過ぎて涙が出そうになった。こっそり端からみた俺たちを想像してみたが、傘の柄は俺たちの境界線にしか見えなかった








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