男のくせに
「ねえ、男装時君はテニス部のマネージャーするの?」
急に前に座っていた女の子が私に話しかけた
「うん、まだ考えてるんだけどね」
「でもやっぱり男の子だと白石君も受け入れてくれるんだねえ」
「え…そ、それ……ままままさか…!」
「なあに?」
「ししし白石君て、ほほほホモ」
「やだあ!違うよお」
うーん、ますます深まる白石君ホモ疑惑…ていうか私どもりすぎ…
「女の子でマネージャーしたい子って、本当に沢山いるのよね。だからマネージャーになった子はいじめにあっちゃうの」
「い…いじめ!?」
「だからマネージャーは受け付けてなかったんだよ。でも男装時君なら大丈夫か」
「……………」
チクンと胸が痛んだ。私はずるいことをしているのではないか。私は本当は女なのに
.
.
「…はあ」
私は放課後、屋上で色んなことを考えていた。本当にどうしよう…マネージャー…
「はあ」
「どげんしたと?」
「ん〜恋の病…」
…誰だ今の
私はムク、と体を起こして隣を見た。そこには髪の毛もじゃもじゃの背の高い男の子がいた。やばい、私、変な事言ったかも
「な、なんだよお前」
「ずいぶん口が悪かねえ」
「は…」
「ふ、…で、恋の病ってなんね?」
「関係ないだろ」
だいぶこの男言葉にも慣れてきた。様になってきたかな?ていうかこの人は一体
さら
「ひゃ…っ」
「はは、男のくせにむぞらしか声ば出すばい」
「む、むぞ…?」
急に私の短くなった髪が彼の手により触れられて、思わず変な声が出てしまった。
「さて、そんじゃ教えてくれっと?なしてお前さんみたいなかわいらしか女の子が学ランば着ちょるのか」
「……………え」
な、なに…?ばれてる…?やだ、なんで?なんで?なんでばれた?どうしようどうしよう、そのときお母さんの言葉が頭を過る。
『世間の厳しさでも思い知ればいいわ』
「……………」
「おーい、聞いちょる?」
「お願い、この事は誰にも言わないで、」
「理由ば教えてくれたら言わないばい」
「…………」
そんなわけで、私は今までの経緯を全てこの謎の少年に話した。恥ずかしいし、不安だし、頭が痛くなってきた
「へーえ、白石のためか」
「知ってるの?」
「いや、まだ会ったことはなか。俺もお前と同じで転入生ばい」
「そ、そうなの?」
確かに方言が関西のものではない
「俺は千歳千里。一組に転入したばい、ついでにテニス部入部希望ばい」
「え…テニス部?」
「ああ、お前さんも入っと?白石好きならそげんくらいの事せんと」
「………でも……」
表情を暗くした私を千歳君が私を覗き込む
「私は女なのに…他の女の子はマネージャーになれないらしくて…私、ずるい」
「男ばい」
「…え」
「この学校内では、お前さんは男ばい」
「………」
「男装だなんて覚悟ばいるたい、お前さんは何もずるくなんかなかとよ」
千歳君は私の頭をぽんぽんと撫でた。なんだか涙が出た。男のくせに泣いてやんの。でもこれはうれし涙だから、特別だよ