いいなあ



「いやな、お前めっちゃ気持ちよさそうに寝ててんから、起こしたら悪いなおもて」
「なんだよ!起こせよ!ていうか謙也もう体調いいのか?」
「あ、ああ。俺なら心配ないで」







クラスに戻ると謙也は普通に席についていた。なんだか話してても目を合わせてくれない、本当に大丈夫なのか?








「…ていうかごめんな、俺寝ちゃって」
「いや、ええって。お前も疲れとったんとちゃう?」







ていうか、さっきは本当にびっくりした。だって、だって、起きたら白石君がいたんだもん!幸せだったというか、なんていうか…











「…恥ずかしい…」


















テストはもう明日。今日は放課後は図書館で勉強をしていった。とりあえず一通りやって、一息つく。時計を見るともう夜の7時だ。そろそろ帰るか












「苗字?」







図書館を出て、下駄箱へ向かってすぐだった。愛しの彼の声が聞こえたのは










「しっしし白石君!」
「何あせっとるん?」
「あ、あはは・・」
「今帰りか?」
「う、うん」
「ほな、途中までかえろか」
「え!」
「あ、用事ある?」
「いや、ない。ないです。何にもないです!」
「はは、おもろい奴やな、ほないこか」
「うん!」







やったあ!一緒に帰れる!




















靴を履いて、白石君と正門に向かう。あたりはもう真っ暗で、街灯がチカチカしていた。













「白石先輩!」








急に後ろから声がした。思わず振り向くと、そこには数人の女の子の姿。













「あ、あの、今日これ授業で作ったんです、よかったらもらってください」











女の子たちが持っていたのは、クッキーだった。多分二年生だろう。家庭科で作ったんだ…









「ありがとな」







白石君は一言そう言ってクッキーを受け取り、にこりと笑った。すると女の子たちはキャーっと行って立ち去って行った。













「…あの子たち、こんな時間まで白石君のこと待ってたんだ」
「せやな、悪いことしてもうたな」
「……クッキーかあ…」








いいなあ、私もこういうことしてみたい








「…なんや?このクッキーほしいんか?」
「え!ち、ちがうよ!」
「食べてもええで、俺別にいらへんし」
「え」











…白石君て、本当に女の子が苦手なのかな…。なんか…やっぱりへこむ…










「……」
「何へこんでるん?」
「え、あ…いや、」
「ほら、行くで」
「お、おう」






ぽん、と頭を叩かれて私は白石君の後をちょこちょこと追った









「…し、白石君てもしかして甘いもの苦手…?」
「え?」
「あ、ほら、クッキー…」
「はは、お前がものほしそうにしとったからやで?」
「え、うそ」
「おもろいなあ」
「か、からかうなよ」
「すまんすまん」
「…じゃあ、甘いものは嫌いじゃないのか?」
「ああ、全然いけるで」
「…!じゃあ…!」









私が作ってきたら、食べてくれる?













その一言を、喉のあたりで飲み込んだ。
私は何を言おうとしているのだろう。そんなこと、男が男にいうわけない














「……あ…」
「ん?」
「あ…ごめん、なんでもない」
「そうか」











白石君は再び歩き出す。私は彼の背中を見つめてその後ろを歩く。












「せや」
「…え?」
「今度、ケーキ食べにいこか」
「ケー…キ…」
「天王寺に美味しい店あるんやて」
「…え…」
「いかん?」
「い、いく」
「ほな、テスト終わったらな」
「う、うん」










その言葉はまるで私の心を読み取ったかのような言葉で、白石君は実は私が女だっていうことに気づいているんじゃないのかと一瞬思ってしまった






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