忘れてた!
「スッキリした…」
風呂上がり。更衣室の鏡に映る、頬の赤い自分。
「…髪がない…」
本当に短いなあ。つかの間の女の子だった。もうあのカツラも用済みだし、跡部君に返さなくちゃ。私は眉毛を描いた後に荷物をまとめ、こっそりと女湯を出た。なんとか部屋につくと、そこには誰もいない。もうみんな食堂に行ったのかな。
「とりあえず、食堂に行こう」
食堂へと足を運ぶと、皆もうそこに集まっていた。
「男装時!」
「え…あ、謙也」
「え、ホカホカやん、風呂はいったん?」
「え!?あ、まあな」
「いつはいったん?」
「さ、さっきだよ、さっき」
謙也は納得のいかない顔をしていた。そりゃそうだろう。私は男湯にはいなかったのだから
「…ぷ」
「…笑うな」
「笑ってなかよ」
「うそつけ!」
「ははは、むぞらしかったばい、さっきのお前」
「…………」
千歳がちゃかしてきて嫌だった。そういえば、さっき白石君はいなかったんだよね、あの場に。よかった、女装してたの見られなくて…
「わ、おいしそ」
並べられた料理に思わず嬉しくなった。おいしそうなんだもん、ここのシェフの作る料理
「わ、このプリンおいしー!」
「苗字、俺の分食べるか?」
「え、いいの…」
まてまてまて。白石君がせっかく言ってくれたことだけど、プリンほしがる男ってキモくないか?うん、だめだ、だめ、ゼッタイ。
「い、いらねえよ!」
「なんやねん」
よかった、とりあえず、男度ましたかな?そんな私を見てクスクス笑っている奴がいる
「…だから笑うなっつってんだろ…」
「はは、笑ってなかよ、」
「……」
「男装時、今日は夜楽しみばいね」
「は?」
「蹴り倒されないか不安ばい」
「夜って…」
そうだ!忘れてた!今日の夜は千歳の布団にお邪魔するんだった!
「…最悪だ…」