私の失敗



只今洗濯物を干している最中。皆毎日ドロドロになって練習から帰ってくるから、なんだかやりがいがある。それに今まで洗濯なんて家のメイドさんたちがやっててくれたから、いい経験にもなる。







「よし、ほせた」





パン、と最後の一枚を叩いて洗濯バサミで止める。…にしても、皆結構色々カラフルなパンツ履くんだな…。これとか凄い、豹柄!…え、金ちゃんかよ









「…さすがにイチゴ柄はナシ、か…」





あたりまえだよなあ…。早急にパンツについては手を打たなければ…。私の履きかえたパンツもなんだかんだで純白のやつだし…。あーもう、これだから合宿って困る






「…早く終わんないかなあ…」







せめて白石君ともっと仲良くさせてよ!























しばらくすると練習を終えた皆がちらほらやってきた。あ、タオル渡さなきゃ、何人もいる中で、一人だけ色がついて見える。ああ、白石君だ










「白石君!」
「お、苗字」
「…こ、これ。タオル」
「あ…スマンな」







白石君は丁寧に汗を拭いていく。…なんか色っぽい。








「…だから苗字、見すぎやて」
「…え、あ!お、俺また見てたか?」
「おう、バッチリな」
「ご、ごめん!別に変な意味はないんだ、ただ…」
「ただ?」
「…ただ…」
















「…白石君のパンツって、アロハシャツ柄だったんだな…」









ああもう言い訳も思いつかない!わけわかんないことばっかり口にしちゃうよ!




























『いただきまーす』








昼ごはんはビーフシチューだった。…おいしい。私が作るのなんかよりもうんと美味しいよ。…ていうか料理とか全然したことないし。お菓子作りしかしたことないし









「…あ、苗字、ほっぺにご飯ついてるで」
「…え」







ひょい、と手が伸びてきて私の頬に触れる。それは包帯が巻かれた白石君の左でだった。







「…わあ!」






ガタン!






状況を飲み込んだ瞬間、私は体をビクっと震わせる。びっくりした、白石君が、白石君が私のほっぺを…っ






「な、なんやねん」
「ご、ごごごごめんな、なんでもない、っていうかありがとな」








ふう、焦った…。…なんか全然白石君と近くなれないや。あ、テンション、下がってきた…













「男装時」










声と同時に隣から手が伸びて私の頭を抱きかかえる。え、…千歳?







「ちょ…っ何してんだよアホ!」





皆がいるだろ!っと小声で付け足すと、千歳はすぐにパっと離れてくれた。ったく、なんなんだよ!







「なにしてんの千歳ぇ、男装時が可愛いからって手出したらあかんよ?」
「はは、わかってるたい」
「ち、違うって!今、えっと、千歳は俺の頭についてたホコリを…っ」
「名前、言い訳が苦しかよ、」






最後の言葉だけ、ボソ、と私の耳元で言う。くっそー!また名前!普通に皆に聞こえるだろ!









「…なんや苗字、千歳と仲良しやなあ」










「…え」



その言葉の主は白石君。…やだ、白石君、何か誤解してる…










「ち、ちげえよ!千歳はっ」
「仲よかよー?一緒に男風呂した仲やけん」
「な…っ」







また誤解を生むだろ!と千歳をギロ、とにらむと、今度は無表情で交わされた。











・・・あ









勘違いしてるのは、あたしじゃないか…












千歳と仲がいいって言ってもそれは男と男の友情







風呂に入ったっていっても男同士、なんの問題もない












なんでたまに頭から抜けちゃうんだろう











あたしは今男じゃないか













「…っ、ごめん、ちょっとトイレ…」
「え、腹いたいん?」
「ああ…ちょっと下しただけ」
「一緒についてこか?」
「いや、大丈夫だよ、食事中ごめんな」







心配そうな顔をする謙也を払いのけ、逃げるように食堂を出る。














あたしはやっぱり誤った決断をしてしまったのか


口調や外見を変えただけで男になれると思ったのか







所詮は女。中身はかわらない。心のどこかで自分のことを女だと思っている

でもそれは当り前のことじゃない













「…だって私女だもん…」









ポロリと流れ出た涙はそのまま音も立てずに床に落ちた。そのまま涙が床を濡らしてゆく。










「…止まれ、止まれ、」








もう泣くもんか




こうなったら意地でも男になってやる!




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