ついてる


気のせいだろうか。新学期が始まってから私は心が休まる時間があまりない。あると言ったら、千歳に悩み相談しているときくらいだ。




「…失敗…した…」






くそ、なんでイチゴ柄パンツなんてはいちゃったんだろう。そりゃ、ちょっとくらい女の子でいたいに決まってるじゃない。でもまさか、はみ出るなんてこと、一体だれが予想していただろうか。ていうか、いつからはみ出てたんだろう?まさか部屋から…?いや待てよ、でも一回ズボンにシャツをしまおうと外でズボンを上げたような…上げなかったような…。朝ごはんのために食堂にやってくると、私の隣に、のそ、と気配を感じた。千歳だ。相変わらず大きいなあ






「…なあ千歳」
「ん?」
「…その…あの…」
「?なんね?」






口ごもる私のほっぺたをぷに、と抓る千歳。痛い、痛いよ






「…いってーよ」
「ふ、口の悪か」
「…あのさ、」
「うん」
「…今日の…俺のパンツの柄、わかる?」
「……今日は積極的たいね」
「ち、ちがう!」
「しっとるよ、イチゴ柄」
「えっ…なぜそれを」
「はみ出しとったもん、朝練の途中から」
「うわ…やっちゃった…」
「ま、大丈夫ばい、白石はみとらんよ」
「…なんでわかるんだよ」
「あいつは今日自分のことで精いっぱいだったとよ」
「…?、なんだそれ」








くすくす笑う千歳。本当、謎。この人、読めないなあ






「あ、違う、大丈夫じゃないんだよそれが」
「え?」
「実はさ、財前君に見られてたらしくて」
「ああ…やっぱあいつ、鋭かね」
「どうしよ…ていうかさ、絶対財前君、気づいてるよなあ…」









だって普通男はイチゴ柄のパンツなんて履かないもん…。ああどうしよう、お先真っ暗。目の前に広がる美味しそうな朝ごはんも、なんだか色がないように見える。あたしの人生、もう挫折か?









ポン、








「…う」
「ま、そげん気にすることなかよ」
「……うん」
「元気でた?」
「…出た…かも」
「じゃ、朝ごはん食べるばい」
「…う、ん」










「…あのさ」
「ん?」
「千歳って優しいよね」
「ありがとさん」






本当やさしいよ、何でなんだろうね





















「ふう、食べた食べた…じゃなくて、食った食った」







うーん、あたしの演技力、客観的に見てどうかな?結構最近上達してない?とかうぬぼれるのはやめよう。ぼろが出るから。とりあえず私は食器を片づけると早足で部屋に戻った。だって、このイチゴパンツ脱ぎたいもん。履いてらんないよ











「あ、おったおった」







後ろから聞こえてきた関西弁にピク、と反応し、思わず振り向く。そこには関西人ではない関西人がいた。(いや、日本語おかしいか?)







「あ…ゆ、侑、士…サン」
「はは、何かしこまっとるん?」
「……」
「ま、そないに警戒しよるなって、…あ、せや、警戒するならまず周りに目を向けるより、身近なとこに目つけた方がええよ」
「…な、なんだよそれ」
「イチゴパンツ」
「…!な…っ」
「今朝、丸見えやったで、ほんま、危なっかしいやっちゃなあ」
「…み、みたのかっ?」
「バッチリ」
「………あ、あのさ、このことは」
「黙っとくよ、もちろん」
「え」
「俺はそないに性格悪ないで?」
「…そう?」
「正直なやっちゃ」
「……あ、ありがと」
「どーいたしまして」







ケラケラ笑いながら部屋へ戻ってく忍足君。ちょっとイラっとしたけど、他の人よりも考えが大人びているのは確かだった











「…わたし、結構ツいてる?」








いや、ばれる時点でついてないけどね。でも相手はラッキーなんじゃないかな?皆言いふらすような人じゃないし。…それにしても













「…はあ」









私はいつになったら白石君ともっと仲良くできるのかな







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