複雑な就寝
「ほな、電気消すでー」
皆がベッドに入ったのを確認して白石君が電気を消そうとする。ちなみにベッドは窓側から順に謙也、千歳、私と白石君に順番になった。パチ、と電気が消されると一気に真っ暗になる部屋。
「おやすみー」
「また明日ー」
皆そんなことを口々にする。すると電気を消し終わった白石君がベッドにもぐってきた。
「スマン、詰めるで」
「お、おう」
まだ5月だから布団をかぶらないわけにもいかず、私と白石君は同じ布団の中におさまった。まあ狭くはない。でもシングルだから、かなり密着している。大丈夫か私!
「…はくしゅっ」
「…寒いんか?もっと寄り」
「あ、ごめん」
わああもっと白石君に寄っちゃった!暖かいからいいんだけどさ!ああもう心臓が…!
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俺は今人生で一番ドキドキしている。初試合のときよりも心臓がドキドキしている。理由はこの隣にいる苗字男装時という男。もう完全に俺ビョーキやな。まさか男にドキドキさせられるとは…。
「(寝れへん…)」
あかん、明日朝早いのに…。苗字は最初は落ちつかずモゾモゾ寝がえりをうっていたが、しばらくしてしんと黙った。どうやら眠ってしまったらしい。
「…はあ」
どうしたもんか。…何緊張しとるんやろ俺
「…ん」
隣から可愛い声を漏らす苗字。っておい可愛いってなんやねん。あほか俺。でもほんま可愛いなあ…。こいつ男なのかな…ほんまに千歳の言っとったちんこついとるんか?確認してみよか、とか思たけどさすがにやめた。ただの変態やん
「…白石く…」
「え」
…寝言だ。俺の夢でも見とるんやろか、せやったらめっちゃ嬉しい。
「…ん…白石君…」
やばい、可愛い。もういっそ抱きつきたいとか思ったのはきっとこの暗闇のせい。しかし抱きついてきたのは向こうからだった
むぎゅっ
背中に何かひっついたと思ったら、それは苗字やった。…ちょっとまった、なんなんこれ。やばいやばい、ほんまにやばい、ってか自分落ちつけ、相手男やろ
「…んん…」
時々寝言を言いながら俺にしがみつく苗字。あかん、もうどうしようもないわ。隣からクスクス笑い声がしてきたのは空耳か。とりあえず俺は眠れない時間が過ぎて行った
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あーもう人生うまくいかへん。なんで俺だけ仲間外れなん?てか千歳よりも俺と寝た方が広く使えるやろ、あーもうこんなこと思ってる変態な自分もにくい
「(…俺、あほやな…)」
男装時と一緒に寝ることができない現実にイラつく自分がいた。きっとどこかであいつと寝られる期待を持っていたのだろう。しかしそんな期待は千歳の一言で粉々になった。しかも隣からは白石君、とささやく男装時の寝言。いつからそんな白石好きになったんや男装時は。ていうか一番変なのは
「…俺やん…」
お願いだからやめてくれ自分。ホモにだけはなりたないんや。そう自分に言い聞かせながら俺はひたすら寝ようとした