どっきどき




「あ!男装時おった!」
「あ、小春。みんなも」
「せっかく男装時と風呂入れると思たのに」
「あ…あはは」





小春の怪しい発言を交わしながら皆と会話する。みんな風呂から出たばかりでほかほかしてる。いいなあ、私も風呂入りたい










「よっしゃ、はよ飯食お!」
「おう!」
「男装時隣座ろうや!」
「え…う、うん」







謙也に誘われて隣に座る。あ、白石君の隣に座りたかったなあ…







「じゃ、うち男装時の横!」
「浮気か!小春の隣はオレのや!」
「うっさいわあ、左隣に座ればええやろ」








こんな口論を交えながら右から謙也・私・小春・ユウジの順に座って行く。そして謙也の前に千歳、小春の前に遠山君、そして











「…あ」








私の前には白石君が座った。









「ん?なんや?」
「あ、別に」





私を怪しむ謙也。そりゃあ怪しむよね、だって白石君が前にいるだけで顔がゆるんじゃうんだから








「…へへ、特等席だ」
「何言うてるん?」
「なんでもないー」















食事も終わったところで皆で片づけをし、そして部屋に戻る。







「はーうまかったー」
「謙也食べすぎだって」
「男装時が食わなさすぎやろ!ウサギのエサみたいになっとったやん」
「な、うっせーよ!」








そりゃあ私と謙也じゃ食べる量が違いすぎる。









「俺散歩行ってくるばい」
「わかった」






そう言って千歳は一人どこかへフラフラと歩いて行く。…自由人だな









「あ、苗字風呂入りに行かなくてええの?」
「あ…忘れてた…」









白石君の言葉で思いだされた風呂。うっわあ…忘れてた、どうしよ…









「千歳、…って、あいつ散歩行ったんだっけ、」
「なんや?どないしたん?」
「あ、いやべつに」





千歳に助けを求めようとしたけど、千歳いないんだっけ、私ちょっと頼り過ぎかなあ、謙也に相談できることじゃないし










「…あ、じゃあ俺風呂入ってくる」
「おー、…って男装時、お前何でカバンごともっとるん?」
「あー、まあ色々荷物があってさ」
「ふーん…」






謙也は不審そうな顔をした。そりゃあそうか。男の子なんてタオルと着替えだけで済むもんね。でも私は化粧水とかその他色々持ってくものがあるんだよぉぉ










「あ、俺も行く」
「え!?」
「自販機いくから」
「あ…そか、じゃ、いくか」






まさかの白石君が一緒に行く発言をした。やばい、自販機ってどこだっけ、…なんか風呂場の前にあった気がするんだけど…





















「今日は疲れたやろ、暑かったもんなあ」
「お、おう。結構暑さにやられたかな…」
「明日は帽子かぶった方がええで」
「あーでも持って来てないや」
「俺のでよければ貸したるで」
「あ、ホント?ありがとな」







…白石君の帽子…。嬉しい…。













「お、ついたで風呂場」
「あ…そ、そだな」
「…風呂いかへんの?」
「え、うん、…いくよ?」
「そか」
「……」
「……」
「……」
「あ、俺のことは気にしなくてもええで?」
「…え…うん」
「はよ風呂いきや」









でもなんか風呂場から声するし…誰か入ってんのかな…











「…なあ、はいらへんの?」
「は、はいる!」
「じゃ、俺いくで?」
「え」






いつの間にかジュースを買っていた白石君、







「じゃ、またあとでな」
「おう」






とりあえず部屋に戻って行った白石君。うわ〜、緊張した、冷や汗かいた。とりあえずひと段落。









「…あれ、君たしか」
「わあっ」







後ろから声をかけられてビクっとした。後ろを振り向くと髪の毛がふわふわした男の子








「あ、ごめん驚かせちゃった?」
「…う、うん。…ごめん誰だっけ?」
「俺氷帝の芥川ジロー、君マネージャーだよね〜」
「芥川か、俺はマネージャーの苗字男装時だ、よろしくな」
「うん、よろしく〜」
「…お前何でこんな時間に風呂入ってんだよ?」
「寝てたら置いてかれたんだよ。ひどいC〜」
「ね…寝てた?」
「俺よく寝るんだよね。今はスッキリしたけど」
「そ、そうか」
「じゃ、また明日ね、男装時クン。おやすみ〜」
「お、おう。おやすみな」









なんか変わった子だったなあ…。よし、これでもう風呂場には誰もいないはず。入ってみるか…









ガラ、





戸をあけると、静まり返った脱衣所。よし、誰もいないよね。私はササっと着替えて、一応タオルを撒いて浴場の戸をあける。もわ、と温かい空気が肌にしみる。








「わ…広…」









そこにはまるでホテルのような広い浴場。すっご。しかも露天風呂まである…。私はさっさと出るために頭と体をササっと洗った。でもやっぱり心は女の子なわけで。露天風呂とか気になっちゃうわけで。






「…さっさと出なくちゃいけないけど…」








ちょこっと、入って行こう、露天風呂!







ガラ、







露天風呂への扉をあけるとひんやりとした外の空気が痛かった。はやく湯船につかろう。









チャプ…





「わ、すごーい、お湯が真っ白…」






何かの温泉かな?とにかく、気持ちい…。今日とっても疲れたけど、癒されるなあ…










「…はあ、気持ちい…」
「…誰かいるのか…?」

















ザバッと体を手で隠す。え、誰かいる?本当に?え、ちょっとまってまって、頭ぐるぐるだよ、そういえばさっき声がしてたじゃん、芥川君のひとりごとなわけないじゃん、会話に決まってるじゃん













「…ああ、お前か」
「…!、あ、跡部君…」









岩陰から顔を出したのは跡部君だった。まさかの跡部君…!こんなタイミングで、この相手とは…










「な、何してるの?風呂の時間はもうとっくに…」
「俺は食後のバスタイムだよ、オメーこそ何してんだよ」
「お、俺はさっき夕飯の支度してて入りそびれたんだよ」
「そうか」









よかった、お湯が白くて。もう心臓がドキドキだった。うわあ、絶体絶命。ばれませんように…











それからしばらく経った。あつい、やばいのぼせる、もう限界、でも跡部君より先に出るわけにはいかないし…











「…俺様はもう出るぜ」
「あ、…お、おう」
「じゃあな」








そういうと跡部はザバ、と上がって出て行った。よかった、タオルつけててくれた…。それにしても私も上がりたいなあ、でもいま上がったら鉢合わせするし、もう少し浸かっていよう




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