小さなわがまま





はあ、今から部活かあ。少し憂鬱だ。多分合宿の話もされるんだろうなあ。








「…あの」
「わっ…………?」




いきなり話し掛けられてびっくりした。そしたらそこにいたのは可愛い女の子。何か用かな







「あ……な、何か用ですか?」
「少し来てくれませんか?少しでいいので」
「え」




部活あるけど…まだ時間あるしいっか。







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「私一組の佐々木奈々っていいます。男装時君のこと…初めて見たときから気になってて…」
「え」







これはまさかの告白?でもどうしよう、気持ちに答えるなんて無理な話だ。私は女なんだよ?






「お願いしますっ私と付き合ってください!」
「…ご、ごめんなさい」
「…っ、好きな人、いるんですか」
「いやそうじゃないんだけど…」






佐々木さんは涙目になっている。私はこんな可愛い女の子を泣かせてしまうのか。なんかつらい






「ごめん、」
「え」
「ごめんね…」
「あ、ああああのっ」
「え?」





気付いたら私は彼女を抱き締めていた。だってかわいそうだったんだもん、でも今の姿でしたらやばいのか!





「じゃ、じゃあお友達になってください!」
「ああ、それいいね。是非」
「あ、ありがとう!」






そういうと佐々木さんは嬉しそうに校舎へ戻っていった。よかった、少しは傷つけなくてすんだかな?







「ふふふ、みたで―!」
「わあ!」





がさ、と茂みから飛び出してきたのは小春だった。びっくりした!






「おい!急に飛び出してくんなよ!」
「男装時ってば大胆やね―!抱きつくだなんて!」







小春はひゅーひゅーと言いながら私をちゃかした。はあ、疲れた。因みに次の日から「苗字男装時紳士疑惑」とか広まってしまったのは言うまでもない







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「苗字がこくられた?」
「おん!まあ、可愛らしい顔しとるからな」





急に入ってきた謙也情報。まあ確かに綺麗な顔やからなあ。まちごうたら、女の子みたいな顔やけど





「…苗字ねえ…」
「そいえば白石、お前男装時とあんまり仲よくないなあ」
「あ、ああ、まあ」
「なんでや?気あわんとか?」
「それは…」






向こうが避けとるから、なんて言いにくいが。…はあ、合宿の間に仲良くならなあかんなあ。未だに名字呼びやし




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.





「…て、わけやから、大丈夫か」
「おう」





いま、私は部室で白石君と二人きりだ。合宿の説明を受けていたのだ。…き、気まずいにも程がある。







「……ありがとな、じゃあ俺帰るわ」
「あ!ちょお待ち!」
「なっ、なに?」






カバンを持ち逃げ出そうとした私の手を白石君が勢いよく掴む






「(ほっそい腕…)あ、あの、呼び方なんやけど」
「呼び方…?」
「あ、えと、下の名前で呼んでもええか?」






予想外な話だった。まさか白石君から私に近づいてくるだなんて。しかも名前かあ。ぶっちゃけ嫌だった













「ごめん、名字で呼んでくれる?」
「え」




呆気にとられた白石君の手を振り払い、私は勢いよく部室を出た。だって、白石君には私の本当の名前を呼んでほしかったんだもん。こんなわがまま言ってる場合じゃないのにね




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