優しいんだね



転入して1ヶ月が経った。正直精神的にまいっている。理由その一、白石君が結構鋭い。彼、無自覚なのか、度々私に「どっかで会ったことある?」って聞いてくるのだ。しつこいし、鋭い。ばれるのも時間の問題?







「なに難しい顔しとるん?」
「…謙也…」






理由その二、謙也。なぜか今一番仲が良い。話しやすいし、謙也って鈍そうだから、私が女ってことにも気がつかなさそう。でもあんまり仲良いと、トイレ誘われるわ体育の着替え誘われるわ、本当に危ない。






「なあ、トイレいかへん?」
「いや…今出るものも出ないから…」
「なんやねんそれ」







そして謙也は白石君を誘ってトイレにいくのだ。因みに私は白石君とはめったに話さない。私が避けているからだ。彼と仲良くなりたくてこの学校にきたけど…仲良くなったらだめだ、ばれちゃうもん。悲しいけど我慢我慢






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「…でな、男装時がな」
「…謙也、ほんまに苗字と仲ええな」







俺の隣で苗字の話ばかりする謙也に嫌味っぽく言う。なぜなら俺はあいつとそこまで仲良くないからだ。同じクラスで同じ部活なのに。ていうか、向こうが若干俺を避けている。なんでや





「う〜ん、……」
「なんや白石、うんこやったら洋式便所いきや」
「汚いわあほ、てかうんこやないわ」
「なんなん?さっきからうなっとるやん」
「…いや、」






なんで避けられとるんやろ。どっかで会ったことあるか聞きすぎたやろか。でもどっかで見た顔やねん。あいつの顔





「あ、せや、苗字に合宿の話伝えなあかん」
「ああ、ゴールデンウィークの?懐かしいなあ。一年早いわ」






合宿の要項を渡さなくては。果たして彼に渡せるのか。なんで俺こないに苦労しとるんやろ…







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次の授業は英語かあ。どうやら英語だけは私の学校の方が進んでいるらしい。キリスト教だから仕方ないか。授業が始まるまで机でうなだれていると、なにやら包帯が巻かれた腕が目に入る。がば、と顔を上げると白石君だった。思わず目をそらす






「…あ、何か用?」
「……ああ。これ、合宿の要項なんやけど」
「合宿…?」





その言葉に嫌な予感がして、私は思わず白石君の持っていた要項を取り上げる






「…な…」




まさかの二泊三日。ゴールデンウィーク合宿だった。待った待った、これやばくない?





「詳しくはまた話すわ、とりあえず目通しといて」
「…お、おう」






極力白石君と目を合わせないようにして話す。だって目が合ったらばれちゃいそうだから。








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「…はあ、」





合宿かあ。危険な匂いがする。でもマネージャーだから行かなくちゃだよなあ






「…はあ」
「さっきからため息多すぎばい」
「………わ!千歳…っ」
「なんかあったと?」
「べ、別に…関係ねーだろ」
「男装時、俺ん前で男ぶっても無駄ばい」
「………」
「で、なにがあったと?あと、いい加減ホントの名前ば教えてくれん?」
「………今度合宿があるんだよ。名前は教えたくねえ」







千歳にはばれてるけど、こいつの前で気を抜きたくなかった。誰かが聞いてるかもしれないし







「合宿?……危険じゃなか?」
「危険だよ…あーどうしよう、風呂とか着替えとか…」






すると千歳はにこ、と笑って私の頭をぽんぽん撫でる。






「ま、影から支えてやるばい、心配するんじゃなかよ」
「………千歳…」





そういうと千歳は屋上から出ていった。私はこんなにツンツンしてるのに、優しいんだよなあ。




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