無題



手塚が好きだった。どんな漫画のキャラの中でも彼が好きだった。本当に好きになってしまって、そのたびに私はつらくなるのです。だってどこ探したっていないんだよ。遠恋より辛いんだよ。どんなもので補ってもあなた以上のものなんて存在しないのに。そのたびに私は哀しくなる。ねえ、なんとかしてよ神様。とりあえず寝て、起きる。目を明けた瞬間、朝日が目にしみる。ああもう、またこんな毎日か。いらつく。つまらない毎日。彼に会いたい、会いたい、会いたい、






「会いた………い?」






顔を洗うために部屋を出るとなんだか景色が違う。ここ、あたしの家?いや違う。そしてあたしも、あたしじゃなかった。





「………なにこれ」





鏡を見たら、色素の薄い髪の毛に、整ったきれいな顔。これは明らかあたしじゃない






「……不二?」






なんだこれなんだこれ。なんであたし不二になってんの?あ、…夢か。当たり前じゃんね。夢なら思い切り楽しもう。






「行ってきます、姉さん」
「いってらっしゃい」




うん、不二の姉、美人。さすがだね!とか感心してみる。とりあえずドアを開けると、そこには見覚えのある姿があった









「…て…手塚…?」
「おはよう」
「ほ、本物?」
「寝呆けてるのか?」





手塚はふに、と私のほっぺをつねる。しかもなんだよこの世界、まさかの塚不二?え?







「寝呆けて…ない…」
「いくぞ、遅刻する」






す、と手を取る手塚は今まで見た人の中で一番格好よかった。夢だけど、夢なんだけど、嬉しい!









「手塚」
「なんだ?」
「手塚に会えて嬉しいよ」






すると、ぽっと頬を赤くする手塚は最高に可愛かった。客観的には不二に手塚が頬を赤くしてるんだよね。なんか不二に嫉妬しそう。例えまわりから見たらただのホモだとしても、あたしにとったら青春のひとかけらなんだよ






それからしばらく経った。にしても…長い夢だなあ。いつ覚めるんだろう。昨日の部活では見事不二並のテニスしちゃうしね!夢ってすごいなあ






「不二」
「あ、手塚」
「………」
「くす、一緒に帰る?」
「…ああ」






また手塚赤面してる。くそう、不二に嫉妬!しかもあたし、不二の真似がうまくなってきてる気がする。






「手塚、顔真っ赤」
「な…っ」
「ふふ、かわい」






こんな可愛い手塚はじめてみる。たしけもびっくりだよ。ねえもっと色んなあなたが見たいよ、もっともっと、もっと







「…手塚」





そっと手塚の頬に手を触れて、ほっぺにキスをする。そしたら手塚がまた顔を真っ赤にして、可愛かった







可愛い、
こんな手塚初めて




なにもかも初めてで




ああもう、











幸せ









「不二」
「ん…なに?」






またふに、と私のほっぺを、あ、今度は撫でた









「なんで泣くんだ」







気付いたら、泣いてた。








「うれし涙、かな?」
「…………」
「そんな心配そうな顔しないで」
「お前が悲しむと、俺も辛い」





そういって彼は不二を抱き締める。身長差のおかげで本当に彼氏彼女みたいだった。なのに、手塚は私を見てくれることはないんだね、ねえ、哀しくて死にそう。どうしたら私は、哀しみから抜け出せる?








「…僕、不二周助でよかった」








僕が笑ったら、手塚も笑ってくれた。ほら、これでもう悲しくない


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