ポルターガイストと白石


あれからどれくらいの月日が経っただろうか。君が僕の目の前で、あの桜が舞い散る道路で、大量の血をながして死んでいったことは今でも忘れていない。嫌でも忘れられない。脳裏に焼き付いたあの光景は今でも俺を苦しませる。あの時君の手をとっていたら、一体未来はどのように変わっていたのだろうか。俺は記憶を消そうと頭を激しく強打させたりした。だけど変わることは何もなかった。たとえどうでもよい記憶が無くなったとしても、あの事故の記憶だけは消えてくれないんだ。でももう構わない。たとえ真っ黒な記憶だとしても、君との思い出にかわりはない。君との思い出以外の記憶などすべて消え去った。今、俺は君で構成されているとも言えよう。今この瞬間が、きっと人生で一番満たされている瞬間なんだと思った。だからもうこれ以上、いらぬ記憶を作らないために、君の元へ行くために、俺は死にたいと思う。そして今、俺の目の前に広がる高層ビルと青空。いつもは汚い街だなんて思っていたが、最期に見るその街はなんだかいつもと違って美しく見える。青空を大きく仰ぐとなんだか涙がでた。君の記憶だけを焼き付けて、今俺は君の元へ行こうとしている。悔いはない。最高の人生の締めくくりだ。足を柵にかけ、屋上の一番角に立つ。恐怖はなかった。さあ、早く早く、君の元へ行こう。足を一歩空中へ突き出した。











ドン!











「……え?」











俺の体は柵に打ち付けられて、尻餅をついた。目の前には一面広がる青空。今俺を突き飛ばしたものはなんだ?ポルターガイスト現象か










「…そうか…」










どうやら俺はもうすでに君の元にいたらしい。君はこんなに近くでいつも俺を支えていてくれたのか。再び目から涙がこぼれた。しょっぱい。よかった、俺はまだ生きている



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