柳と雪



寒い、寒い、冬の日であった。空のいろは白とも灰色とも言えない雪雲独特の色をしており、太陽の光は遮られ、雪の白が余り眩しくはない、しんみりとした午後であった。雪は降りそうで降って来なかった。辺りは道の隅に雪が積もっている程度で、人が踏んでいったのか、白が茶色に汚らしく淀んでいる。ふう、と息を吐き出すと、目の前は真っ白になった。寒さで動かなくなった手をコートのポケットに突っ込み、中のホッカイロで暖める。寒さに凍え、鼻水を少し垂らしながら、人通りの少ない道を歩く。一歩一歩、強く踏み締めて歩く。気を抜くときっと漫画のように尻から転んでしまうだろうと危惧したためである。実際、先程見知らぬ女性がそうなっていた。冬だ。雪が降ってきた。あの雲は、今にも落ちてきてしまいそうな程、雲を蓄えていた。目の前には雪がチラチラと降っており、視界を悪くした。ふと目の前に見知った人物を認識する。柳だ。こいつには雪が似合う、そう思った。こいつは同じクラスというだけで、大層な関わりがあるわけではなかった。だがやはり挨拶程度はするべきだと、頭の隅で思ったのか、私は彼に手を振った。彼は、真っ白の服であった。真っ白の。なんの淀みのない、白である。雪と同化しそうな彼を何とか見分けながら、手を振る。彼からの返事はなかった。彼はただ、少しだけ笑った。少しだけ。よくみないと、わからないほどの笑みである。「柳くん」そういおうとした瞬間、目の前は再び人通りのない景色に戻っていた。彼はどこにもいなかった。目の前には、ただ雪が、チラチラと振っていた。次第にサイレンが聞こえてきた。静かな街によく響いた。そして誰かが叫んだ




「人身事故だって」

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