謙也と出会う




「…名字名前です。よろしくお願いします」







いま目の前にいるのはこないだのミスコン優勝の子。まさか白石ほんまに勧誘したんか?






「…白石」

「ちゃんと勧誘したで!…半強制やったけど」

「お前すごいな」






「忍足〜」

「あ、はい!」






向こうにおった部長に呼ばれ俺は走っていった。そしたらそこには名字さんがおって、ちょっと緊張や







「お前が部誌書いてるんやったな」

「あ、はい」

「ほな、名字さんに書き方教えたって。」

「え!…わ、わかりました」








急に意外な仕事ができてちょっと焦った。部長はほなよろしく、と一言言うと練習にいってしまった。






「…あ、名字さん、よろしくな」

「……………ん」









あ、あれ?なんや想像しとったのと違うなあ…まあそれはええとして、部誌部誌







「あかん、部誌部室や」

「………………」

「すまんな、部室まできてくれるか?」

「………………」








彼女はコク、と頷き、俺の後ろについてきた。緊張するなあ〜部室に二人か…なんて会話したらええんやろか



















ガチャ






「すまんなここまで」

「………うん」

「あ、あった!部誌はこの緑の表紙な」

「…わかった」








名字さんは部誌を手に取りぱらぱらめくりはじめた。







「じゃあ書き方教えるわ、ここ座って」








俺は空いてる椅子に名字さんを招くと、名字さんはちらと椅子を見て、椅子をじーっと見つめたあと静かに座った。うーん、読めへん子やなあ








「まずここに練習内容かいて……」

「…………………」

「今日はまずランニングとラリーと…」







名字さんは俺が書くのをじっと見とる。…なんや緊張するわ!







「よし、で、次は…」

「………ねえ」

「な、なんや?」

「¨晴れ¨が¨青れ¨になってる」

「あっ、」

「…ここも。¨明日¨が¨月日¨になってる」

「あ…あはは」







あかん、あほ丸出しや。なにが書き方教えるやねん。誰もこないなアホに教わりたないわ。あかん、あかんで!







「…かして」

「あ、ハイ」

「………(下手な字)」








名字さんは俺に色々聞きながら綺麗な字でさらさら書いていった。俺の字が古代文字のように見えるほど名字さんの字はきれいやった。

















「これでしまいや!」






全部書きおわって俺は名字さんを連れて部長のとこまで行って部誌を提出した。







「きれいな字やな!忍足の字がショボくみえるわ」

「…………」

「よしよし、じゃあ忍足、明日は洗濯教えたってな」

「えっ…」

「まかせたで」







いつのまにか名字さんの教育係になってしまった。むしろ俺が習った方がええんやないかって心のすみで思った。










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