嬉しそうだね






「…保健室?」






教室に入る前に、不二君に会った。不二君は、二年生の時に同じクラスだったから喋ったことがある。







「ああ、手塚、朝練でケガしてね」
「そうなの?」
「一応心配だから見にいってあげて」
「う、ん。わかった。」























コンコン




「失礼します…」






ガラ、と保健室の戸をあけると、そこにはジャージ姿の手塚君が。ジャージ姿、何かかっこいいな…ってそうじゃなくて、











「手塚君」
「名前」
「おはよ、大丈夫」
「なぜここにいるんだ」
「さっき、不二君から聞いて」
「そうか…すまないな、心配かけて」
「大丈夫。っていうか、先生いないの?」
「ああ、誰もいない」
「あたし、手当くらいならしよっか?」
「…できるのか」
「できるよ!保健委員だったもん!」
「…そうか、なら任せる」
「うん、じゃあそこ座って」









あたしは消毒液とガーゼを取り出した。手塚君の腕に切り傷が見えた。うわ、痛そう







「…これどうしたの?」
「フェンスで擦った」
「わ、痛そー…」







しみるね、と言いながら消毒液を駈けると、ポーカーフェイスの手塚君が少し顔面を歪ませた。そんな手塚君もかっこいい。なにをしててもかっこいい人なんだなあ。









「……名前」
「…ん?」
「見すぎだ」
「…あ…ごめん」






やばい、見すぎた。恥ずかしい!あたしはさっと視線をそらしてガーゼを張り付けた。










「よし、これでいいかな。」
「悪かったな」
「いいよ、大丈夫」
「ああ」









しゃがんでいた体勢から、立ち上がって片づけをしようと思ったら、手塚君に首元を掴まれ、引き寄せられた。






「わ…っ、」










あ、





キ、ス












「………」
「…顔、赤いな」
「…は、ずかしい…」






手塚君は何も言わなかったけれど、少し嬉しそうな顔をしていた。多分だけどね。









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