夢じゃない
校門で人を待つ。相手は手塚君。ああ、なんて素敵なシチュエーションだろう。
「名前」
「手塚君!」
あたしは嬉しくて犬みたいに手塚君に駆け寄った。やばい、落ちつけ自分
「お疲れ様、かえろ」
「………」
「どうかした?」
「いや、…かわいいと思って」
「……………」
この人、こんなに率直に言う人だっけ?ていうか、顔真っ赤だあたし。
「帰るか」
「うん、」
「今日も送って行こう」
「え、いいの?」
「長く待たせたからな」
「…ありがとう」
・
・
「今、部活は大変?」
「ああ、新入生も入ったからな」
「そっか、あたしも部活やった方がいいかな」
「もう遅いだろう」
「…ひ、ひどい」
「運動はできるのか」
「…あんまり…」
「…ふ」
「あ、笑った」
「すまない」
まるで夢を見ているようだった。手塚君と笑いながら会話をしている自分がいる。なんだかおかしな光景である。だけどこの恋、少し儀式的な感じがする。とりあえず恋人同士っぽいことをしておこう、みたいな。あたしが焦ってるのかなあ。期間を知ってるから
「今日もありがと」
「ああ、宿題、忘れずにな」
「先生みたい」
「………」
「ごめんごめん、じゃあ、また明日」
「ああ」
あたしは手塚君が見えなくなるまで彼の背中を見つめた。ああ、夢なら覚めないでよ