なんてきれいなの
「………」
「………」
あたしは今、手塚君と一緒に帰宅中。一体どういう状況なんだ。帰り道に、隣に手塚君がいるなんて。手塚君は背が高くて、かっこいい。あたしはちっちゃいから、なんだか隣にいるだけで、彼氏みたいに見える。いや、彼氏じゃないんだけども。かっこいいなあ、嬉しいなあ、一緒に帰れるなんて
「…苗字、家はどこだ」
「あ…A町…」
「そうか、割と近いな」
「え、そう?学校へは遠いよ」
「違う。俺の家だ」
「…あ、…そう、なんだ」
恥ずかしい。ていうかあたししっかり喋れてるかなあ。
「わっ」
「!」
ベシャっ
…こけた。恥ずかしい。何もないところでこけるあたし、どんだけドジ?ていうか、恥ずかしすぎて顔あげられない!
「大丈夫か」
ちらりと見てみると、しゃがみ込む手塚君。わ、顔近い!ていうか、やさしい…。
「ご、ごめん、大丈夫。」
「立てるか?」
「うん、大丈夫だよ」
たとうとしたとき、手塚君が手を貸してくれた。…転んだはずなのに、顔がにやける。うれしい。どうしてこんなに嬉しいことばかりしてくれるのかな
「ごめん」
「いや、大丈夫だ」
「…あ、うちここ」
もう家に着いてしまった。もっと手塚君と歩きたかった。ああもう、楽しい時間て過ぎるのが早い
「…わざわざありがとう。送ってくれて」
「いや、好きでやったことだ」
「…う、うん」
「…苗字」
「は、はい」
「今まで言えなかったことがある」
「…は、い」
「俺は、お前を愛しいと思っている」
一瞬、頭の中が停止した。それは嬉しすぎて、というわけじゃなかった。この手塚君からの告白、あたしは涙が出るくらい嬉しい。ていうか、もう信じられないくらいに。だけど、何かおかしい。この展開。どうしてこんな短期間に彼はあたしに惚れたのか。ていうか
あたしの願い事通りではないか
昨日あたしは確かに四つ葉のクローバーに、彼があたしを好きになって、とお願いした。もしそれがかなったなら、彼があたしを好きでいてくれるのは一週間だけだ。だとしたらこのチャンス、逃してはいけないのではないだろうか
「…それだけだ、また明日」
「…あ、あたしも手塚君がだいすきっ」
「………」
「すごく、すごく好きなの。」
「…そうか」
この時初めてあたしは手塚君が笑ったのを見た。ああ、彼はなんてきれいに微笑むのだろう。もしもこれがクローバーのおかげだとしても、決して作り笑いには見えなかった