こっち向いてよ




あなたには、好きな人はいますか



私には、います



人生で初めてできた好きな人



彼はとても遠い人でした




clorver









教室に入ると、一人だけ色がついたように見える人がいる。同じクラスで、隣の席の手塚君。テニス部の部長で、頭もよくて、かっこよくて、彼は本当に人気があった。あたしなんか手が届かないような、そんなひとだった。






「………」







黙って席につくあたし。隣にいるいとしい人に、挨拶もできないような、だめな性格。そんな自分が嫌だった。どうしておはようが言えないんだろう。手塚君は手塚君で、元々そんなに喋らないし、ていうかあたしなんか多分眼中にないのだろう。一度も声をかけてきたことはない。






「…はあ…」








手塚君に聞こえない程度に溜息をつき、あたしは一時間目の支度をした。

























「名前!テニス部見に行くけど、いく?」
「えっ…」









テニス部かあ、きっと手塚君、がんばってるんだろうなあ。見に行きたいけど、もしも見ていることを気づかれたら、ちょっと気まずい。あたしにはこっそり見つめるのが似合ってる









「…あたしはいいや、宿題溜まっちゃってて」
「えー?いいの?今日からランキング戦始まるのに」
「うん。楽しんできて」












そう言って友達はみんなできゃーきゃー言いながらテニスコートへとかけていった。一方あたしはあまり人がいない、木がたくさん生えているところからこっそりとテニスコートを眺めた。











「…はあ、惨め。」





この意気地なし。どうしてあたしは皆みたいにできないのかな。









「もっと、積極的になれたら」





「もっと、明るくなれたら」









…ていうか、








「手塚君が話しかけてくれたら…」










なんて都合のいいことを考えている自分がいる。ああもう、最悪だな自分。そんなこんなで自嘲しながら地面を眺めると、クローバーがたくさん生えていた。










「…あ!」








そこに見つけたのは、四つ葉のクローバー。めったに見かけないのに、結構ラッキー?あたしはそれをぷちんと抜き取ると、こっそりとお願い事をした。
















「…少しの間でいい。一週間でもいいから、…手塚君があたしのこと好きになってくれますように」












なんて理不尽な願いだろう。彼の気持ちは彼が決めるものなのに。あたしはクローバーを生徒手帳に挟むと、荷物を持ってその場を立ち去った。今日はもう帰ろう。変なことばっかり考えて、すこし反省した方がいい








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