だまされていたのね
「あたしは、手塚君が好き」
「ずっとずっと好きだったの」
あたしは生徒手帳からしおしおになったクローバーを取り出した。
「お願い、もう、こんなものに頼ったりしないから、絶対、自分の力でなんとかするから、今までのこと、なかったことにしてよぉ、」
ぼろぼろと涙が落ちてきた。こんなに大粒の涙、初めてかもしれない。いくら泣いても状況は変わらない。こんな恋愛ごっこ、今日で終わりだ。あえて手塚君と呼んでいたのに、その名前にさえ愛着が湧いてしまった
もう、どうしようもない
「…名前…」
「う、…っうぅ、」
「名前、泣くな」
「…え…?」
ゆっくり前をむくと、手塚君がにっこり笑っていた。いつもとは、違う笑顔で
「俺たちは案外気があうのかもしれないな」
「…なに…?」
「同じようなことをして恋をしたから」
手塚君の手にはしおれた四つ葉のクローバーがあった。
「…恥ずかしい話だが、」
「………」
「願いを言う時に、なぜか一週間と言ってしまったんだ」
「………なに、それ」
「…だから心配だったんだ」
「……」
「一週間経ったらお前が俺のことを忘れそうで」
「…ふ、…ばかじゃ、ないの」
「お前もだろう」
どうやらあたしも手塚君も四つ葉のクローバーの迷信に踊らされていたらしい。
でもこれだけは言える
あたしの気持ちも、手塚君の気持ちも、決して偽物なんかじゃなかったんだね
clorver