千石と怪奇現象
俺は女の子が好きだ。柔らかくていい匂いがして、かわいくて。だから一人に絞って愛すのではなく、女の子皆を愛す。それが俺のやり方。
「あ、りえちゃんからメール」
「おい千石、お前また違う相手か?」
「ん〜まあね」
「お前いつか刺されるぞ…」
「大丈夫大丈夫」
昨日は愛ちゃんとデート。今日はりえちゃんと。因みに明日は合コン。毎日楽しすぎる。俺は南の忠告を無視して早速待ち合わせ場所へ向かった。
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「千石君、今日はありがとう、楽しかった」
「俺も!りえちゃん可愛いし」
「やだあ」
本当に女の子って可愛いよな。こうやって少し褒めると頬を赤くして照れるんだ。ゴツゴツして汗臭い男と同じ生き物なんて思えない。まあ俺もその男の一人なんだけども
「じゃあまたメールするね」
そう言ってりえちゃんは手を振りながら俺から離れていく
〜♪
あ、ようこちゃんからだ。多分明日のことについてかな。俺はようこちゃんのメールを読みながら歩きだす。真っ赤な夕日が俺を照らし、真っ黒な影ができる。人のいない住宅街を、俺は一人歩く。なんか、歩きにくいな。体が少し重い。気のせいだろうか
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「千石君てほんと楽しー」
きゃはきゃはと笑い声を出す女の子。この子はようこちゃんの友達の遥ちゃん。今は合コン真っ最中だ。どうや俺を気に入ってくれたらしい
「ねえ、二人で抜け出さない?」
「うん、いーよ」
こんな可愛い彼女からの誘いを断る奴がどこにいるのか。俺は快い返事をして、トイレにいくふりをして荷物をもつ。店から出ると、入り口で俺を待つ遥ちゃんがいる。さて今から何処にいこうか。ここでエスコートできなきゃ、男じゃないよ、
「どっか行きたいとこ、ある?」
「千石君が決めていいよ!」
にっこり笑う彼女に笑顔を向けながら、俺はデートコースを考える。
「じゃ、とりあえず飲みにいく?」
「うんっ」
ガバ、と腕に抱きつく遥ちゃんは果てしなく可愛い。それにしても、体が重いな。昨日に増して、重い。遥ちゃんが腕に巻き付いているからか。それとも気のせいか
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〜♪
真っ暗な部屋に響き渡る着信音。多分、りえちゃんだ。だけど今出るわけには行かない。今は遥ちゃんとセックス真っ最中なのだから
「は、で、ないの?」
「ん〜、今遥ちゃんしか見えないから」
そう、彼女しかみえない、今の俺には。そんなセリフを今まで何十回、違う女の子に吐いてきたのだろう
ことを済ますと、またね、と帰っていく遥ちゃん。ああ可愛かった。満足。とりあえず余韻に浸りながら自慰を繰り返す。だって次に遥ちゃんと会う日は来るかどうかもわかんないしさ。しばらくして出し尽くした後、俺は服を整えてホテルをでる。なんか、ヤり疲れた。そういえばりえちゃんからの着信、無視したままだ
「……疲れた」
体が、重い
今日は夕日ではなく、街灯の光が俺を照らす。夕日じゃないから、影がいつもよりも短い
あれ
なんだこれ、
全然短くねえじゃん
後ろを振り向くと、長く伸びた俺の影。尋常ではない、だって影が俺がきた道からずっとのびてるんだ。それはもう果てしなく。怖くなってさっさと帰ろうとしたが、体がうまく動かない。重い、まるで何かを引きずっているような
「はあ、はあ、」
動け、動け、
「動け、俺…」
『どこいくの?』
急に後ろから聞こえてきた声。女の子の、声。ゾっとして思わず立ち止まる。後ろを振り向くと、相変わらず長く伸びた俺の影。今の声、だれの声だ?
『私しか見えてないって言ったじゃない』
その瞬間、俺の体は地面に押し付けられるかのように、倒れこんだ。まるで、この長い影が、俺を地面に引きずり込んでいるような
「わ、や、やめろ、助けて」
身動きが取れない。誰だ?この影はなんなんだ。力が抜けていく中、俺は必死に目を開けて再び影をみる
「…り…え、ちゃん…?」
影にうっすら見えたのは、りえちゃんの姿。いや、違う。りえちゃんだけじゃない、もう名前も覚えていないような女の子まで、見える。何人も、何十人も、それはもうたくさん
『うそつき』
はっと目を覚ますとそこは病院だった。真っ白な布団やカーテンが目にしみる。俺はむくりと起き上がると、体が汗びっしょりなのを感じた。しかも外を覗くと、雪が降っている。おい、こないだ迄夏だっただろ?俺どんだけ寝てたんだよ
「…、こわかった…」
自然と涙が出た。これってもしかしたら、女の子たちの仕返しかな、怖い、怖い、
「……こわ、い」
それ以来、俺は女の子を愛せなくなった。どんなにゴツゴツしてても、どんなに汗臭くても、もう男しか愛せなくなった
▽匿様へ!
リクエストありがとうございます!千石の奇妙な話でございました。なんだかわけのわからない話ですが、どうでしょうか。ご期待に添えていたら嬉しいです!(^^)アコ