きれい







「…どうしたの?」
「気になったから」






夜、こっそり合宿所を抜けていつもの海にやってきた。さっきのにわか雨はすっかりやんで、波も穏やかになっていた。昼間はキラキラ輝いていた海も夜になると真っ黒に見えた












「…夜の海は怖いね」
「ああ、あんまり波の方には行ったらあかんて」
「うん、わかった」










波に触れようとする彼女の腕を引き寄せて隣に座らせると、腕と腕がくっついてすこしドキドキした。こんな真夜中でも彼女の腕ははっきり分かるほど真っ白だった












「ねえ」
「なんや」
「もっと寄ってもいい?」
「え」
「お願い」
「ええけど…」












すると彼女は俺の脚の間に座りこんで、もたれかかってきた。いくら夜っていっても照れる














「…あったかい…」
「………」
「安心するね」
「…なあ」
「何?」
「…お前、日本人?」
「…ふふ、何人に見える?」
「…フ、フランスとか…」
「あはは、おもしろい」
「(なにがや)」
「何人だろうね」
「なんや、それ」














「光―――!」













急に合宿所のほうから謙也さんの呼ぶ声が聞こえた。一瞬ビクっとして、今この状況をどう説明しようかものすごく考えを巡らせた。だけどいつの間にか温もりが消えていて、












「…い、ない…」




「おい、光!お前合宿所抜け出すな!」
「…なんでや」
「え」
「どこいったんや、」










今、ここにいたはずなのに









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