揺らいだ


「帰り方は、わかるんか」
「…うーん、わかんない」
「………」
「いやでも、多分、帰れる」
「その自信はどこから来るんじゃ」
「絶対、今、この気持ちで走れば帰れるの」
「なんじゃ、それ」









住宅街の道に障害物はない。人もいない。リュックが少し重いけど、なんとか走れそう。











「…雅治」
「ん…」
「あたしのこと、忘れてもいいよ」
「…いやじゃ、絶対」
「……忘れてよ…」











どうしてあたしはこの人に恋をしちゃったのだろう。悲しいのはあたしだけじゃないのに。雅治だって同じくらい悲しいのに。今、昔の気持ちを取り戻したあたしは、きっとこの道を全速力で駆け抜ければ元の世界に帰れる。絶対。直感でわかる。でも、帰りたくないの。何でこんなに、心が揺れるの。それはあなたがいるから。走る楽しさを思いだして、さっきまで、元の世界に帰ったらもう一度一からがんばろうって、思ったのに、雅治を目の前にすると、帰りたくない気持ちがどんどん大きくなる。












「…、雅治ッ」
「名前」
「ばいばい、ありがとう、大好き、また会おうね」
「…名前…っ」










あたしは全速力で駆けだした。夜の風が気持ちよい。空を見上げたら一面星空が広がっていた。それを見ながら走っていたら、体が浮かぶ感覚に襲われた。嗚呼、気持ちいい、なんて楽しいんだろう。この世界に来てよかった











あたしの心は揺らいでた

答えを得て、前を向いた

でも雅治を見てまた心が揺らぎそうになった








でももう後ろは振り向かないよ、ありがとう、大好きだよ、





揺らいだ
絶対また会おうね








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