最初で最後の





「にーおーうーくん」
「………」







ベランダから顔を出した雅治は、あたしをみて一気に顔色を変えた。









「ちょっと、まちんしゃい、」






そういうと、ドタドタと階段を下りて玄関から飛び出した。











「お疲れ様、夜分遅くにごめんなさい」
「…名前、お前、体が…」
「あたしね、この世界に来る前、走るのがすごく嫌だったの」
「…へ」
「それで、なんで走ってるんだろう、って思ってたらこの世界にきちゃって」
「………」
「さっきブン太に言われてわかったんだけど、」














「大切なのは楽しむことだよね、優勝することだけが、目的じゃないんだよね…」













雅治は何も言わずにあたしの話を聞いてた。でも、段々と表情を暗くしていった











「…もう、帰るんか」
「…ん、多分。体も元に戻ったし」
「……名前」
「ん…?」

















「…いかないで…」














弱弱しく言った雅治の言葉に涙がポロ、とあふれた。今まで抑えてきたものが、すべてあふれだすかのように。













「…泣かないでよ…」
「泣いてるのはお前さんじゃ」
「…う…ぅ…」








涙がとまらないよ。どうしよう












「ねえ雅治」
「…なんじゃ」
「悲しいよ」
「…俺も」
「でももうどうしようもないんだよね」
「…なしてわかるんじゃ」
「…直感」
「…そか」
「ねえ雅治」
「なんじゃ」















「最後に、キスしてください…」














やさしいやさしいキスが降ってきた。あたしの頬と雅治の頬が触れて、お互いの涙が交わり、口に少しだけ入った。甘い甘いキスなのに、なんだか少しだけしょっぱかった。もう泣かないよ。絶対ね





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