また会いましょう
「もう、ここにもいられないなあ」
あたしはこの世界に来た時に持っていた荷物をまとめ、ホコリを被った徳川高校とかかれたジャージを着て、ドアノブに手をかけた。
「…ありがとう、この部屋も愛着がわいちゃった」
ドアノブにかけた手を見る。ブカブカだったジャージも、ピッタリのサイズになって丈もちょうどよかった。
ガチャ
「お、名前!今水持っていこうとしたとこだったんだけど…出かけんのか?…あ…あれ?」
「ブン太」
水を持ったブン太があたしを見て目を丸くした。
「…お前、こんなでかいっけ?」
「…ブン太」
「あ?」
「…ありがと…」
同じ目線になったブン太をギュっと抱きしめた。まるで弟みたいだった。ブン太は少し赤くなりながら動揺している。え、こいつ誰だよって顔してて面白かった
「じゃあね」
「あ、おい!えっと、名前?どこいくんだよぃ!」
階段を下りるとブン太もくっついてくる。玄関でランニングシューズをはいているときも、ブン太はあたしの後ろに立っていた
「…なあ、お前、」
「ブン太」
「…え」
「ホントにホントにありがとう!」
「え…な、何が?」
「へへ、ありがとね!また、会おうね」
「は?」
意味不明みたいな顔をしたブン太を見ながらあたしは家を出た。もう、ブン太ともお別れなんだ。なんだか無性に、悲しくなった。残る目的地はあとひとつ。行かなきゃ、彼のところに