無色の痛み


よくこういう質問をされた。陸上部の人はただ走ってるだけなのに、楽しいのかって。確かにそうだ。長距離なんて特に苦しい。はたから見れば、自分を痛めつけてるって見える人もいるだろう。あたしは短距離を走っているときに、ものすごく爽快感を覚えていた。200Mを走るとき、あのカーブからゴールを見るときだけ、ものすごく世界が広く見えるのだ。これは走った人にしか分からない。気持ちくて、楽しくて、ひたすら走っていた気がする。いつからだろう、そんな気持ちを持てなくなったのは。そういえばあの日もこんなこと考えてた。どうしてこんなに苦しいのにずっと走り続けているのだろうって。気づいたらこの世界に来ていた。ずっとずっと不思議だった。何でこの世界にとばされなくちゃいけなかったのだろうか。どうしてあたしはあのテニス部の人たちと関わりを深めていったのだろうか。もしこれが必然ならば、一つ理由が浮かんでくる。間違ってるかもしれないし、正解もわからないけど。きっとあたしに足りなかったものを気づかせてくれるためなのではないのだろうか。一体誰が仕組んだのかもわからない。怪奇現象。でも、もしそれが答えならば。もうあたしは目的を達成したということになるのではないか。もう、元の世界に戻るのではないだろうか。そんなことを考えながら、あたしは気がついた。体が元に戻り始めている。嗚呼、やっぱりそうなのね。無色の痛みが心に染みていった。



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