そういうことか
「お…おかえり」
「…ただいま。」
ブン太が帰ってきた。いつもよりだるそうに荷物を下ろして靴を脱ぐ。うーん、なんて声をかければ…
「…………」
「………残念だったねくらい言えよバカ」
「ご、ごめん」
「露骨すぎだっつーの。」
「え…えへ」
「はー、疲れた。あ、名前これ土産」
「あ…ありがとう…」
バサッと手渡された袋には東京バナナが入っていた。定番を買ってきたなあ…。ていうか、ブン太結構元気じゃん
「おい、なにしてんだよ。早く食べよーぜ」
「え、いま?」
「当たり前だろい!早くお茶いれてくれよ」
「はいはい」
.
.
「安心したよ。ブン太元気そうで」
「…当たり前だろい」
「まあ、負けを経験するのもいいことだよね」
「…………」
あれ、黙っちゃった。今あたし、いいこと言った気がするんだけどな。
「…ブン太?」
「試合おわったあとさ、」
「え、うん」
「幸村くんが言ってた」
「…なんて?」
「…これからは楽しくテニスすんだってさ」
「……たの、しく…」
「俺たちも少しピリピリしすぎてたかな、優勝優勝って」
「…………………」
「ま、まだ高校もあるしな。まだまだこれからだぜ」
「名前?どうしたんだよ」
「…たのしく……」
「たのしく、テニス…」
じゃあ、あたしは
ズキン!
「…うっ」
「名前!?」
「あ…頭が…」
「風邪でもひいたのかよ、さっさと寝とけって」
「…ごめん」
あたしは食べかけの東京バナナをブン太にあげて、部屋へ戻った。頭が痛い。たのしく、テニス。じゃああたしはなんなんだろう。毎日毎日タイムを気にしながら走る。一位を目指して走る。苦しくて苦しくて
あたしはもっと楽しく走りたかったのに