残念ですね
もうどれくらい時間がたっただろう。一日学校もなく部活もない。そんな日はいつもブン太と遊んだり、最近は雅治の家にいったり、そんな日々を送っていたが今日は二人ともいない。走りに行こうかと思ったけど、暑すぎてそんな気力は失せた。ダラダラしているうちに部屋には西日が照ってきた。今何時だろう。
ピピピピ
なんだ、メルマガか?そんなことを思いながらケータイを手にする。学校の友達だ。
『テニス部、準優勝だって!』
「…準優勝…」
聞こえはいいが、つまり、負けたってこと。負けちゃったんだ。
「…雅治…ブン太…大丈夫かな」
帰ってきたら、二人を慰めたほうがいいかな、いや、放っておいた方がいいか。ていうか、ヘコんで帰ってくるかな。ブン太は立ち直り早いからな
「おばさん」
「あら、名前ちゃんどうしたの?」
「テニス部、準優勝だって」
「あらっ負けちゃったのね」
残念ですね、そう言いながらあたしは夕食を作るおばさんを手伝った。おばさんはこの知らせを聞いて、特に落胆するという表情や行動は見せなかった。
「…ショックじゃないんですか?」
「え?」
「…ブン太、負けちゃったんですよ」
「あたしはブン太ががんばってるってだけで十分よ」
ああ、そういう考え方もあるのか。まあ、保護者目線からの大切なこと、だな。そう思いながらあたしはボールの中の卵をかき混ぜた。