拗ねるなよ






「苗字、お前片づけやっとけ」
「え!?なんでですか!?」
「今日、ぼーっとしすぎ」






とまあ恋に酔いしれた結果、あたしは雑用を任されてしまった。みんなが着替えて帰宅しようとしている中、一人砲丸ややり投げ用のやりを片付ける。むこうのテニスコートには雅治とかブン太とかの姿が見える。うわあ、好奇心に負けた。あたしの脚は倉庫ではなくテニスコートへ向かっていった










「…雅治だ」








いつもとは違う顔つきで練習に励む姿が見えた。ちなみにブン太も。みんなやけに張り切ってるなあ。全国大会決勝の大事な時期だからかな















「…何してんだよ」
「…わっブン太!」
「……帰り、ちゃんとまっとけよ」
「…あ…あの」
「なんだよ」








ちゃんと言わなきゃ、今日は雅治と帰るって、そんなこと言ったら怒るかな












「丸井、私語は禁止だよ」
「わっ幸村くん!」
「やあ、苗字さん、さっきぶりだね」
「…あ……やっほー」









動揺してうまく返事が返せなかった。何がやっほーだ。あほか。少し、幸村君は苦手だった













「…みんなすごいがんばってるね」
「ああ、さっきも言った通り、三連覇が僕らの使命だからね」
「………そっか」
「…どうかしたかい?」
「…なんでもない。ブン太によろしく言っといて。」












そう言ってあたしはその場を逃げるように立ち去った。完全に理解した。あたしは、なんかしらないけど、本当に幸村君が苦手だ。

























倉庫へ荷物を置き、着替えて部室を出ると、テニス部も大体片づけを終えていた。とりあえず、部室のところで待っておけばいいかなあ










「名前」
「あ…っ雅治」
「もう部活おわったんか」
「うん。もう終わりだよ。」
「…待っててくれたんか」
「…う…うん。でもまだブン太に何にも言ってないや」
「あいつ、拗ねそうじゃのう」
「昨日からあたしブン太の機嫌そこねさせてばっかりだよ」








雅治は笑いながら部室へ入って行った。しばらくするとみんな着替え終えたらしく、次々と部員が出てきた。












「あ、苗字さん、またあったね」
「…あ、幸村君…お疲れ」
「ありがとう、丸井待ちかい?」
「…あ、まあ…」









ズキっ









「いたっ」
「どうかした?」
「…いや…頭が…」








またさっきの頭痛だ。一体何なんだろう。病気かな












「名前?」
「あ…雅治」
「頭いたいんか?」
「…いや、大丈夫、気にしないで」
「………」






雅治が心配そうにこっちを見ていた。しっかりしなくちゃ。しばらくするとブン太も部室から出てきた。う…気まずい










「…ふん、バカ名前!」
「……はは」







ブン太ってなんか可愛いかも。拗ねちゃってる。








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