絶望に沈む
「はあ、はあ、」
走って走って走って。それがあたしのやるべきこと。とにかく走って走って、一位をとらなきゃ、入賞しなくちゃ、記録を出さなくちゃ
「苗字さん、タイム最近伸びないね」
マネージャーさんから言われた言葉に一度体が止まった。あたしは東京の私立高校の陸上部に所属している。全国大会常連校だった。その中であたしはエースという名を負っていた
「…疲れた…」
最近何にも楽しくない。ただ走ってるだけ。ただ記録を上げようとしているだけ。つまらない。退屈だ。昔はもっと走ることに気持ちよさを覚えていたのに。
『1位とりなよ』
『タイムあげろ』
そんな言葉ばっかりだ。あたしは一体何をしたらいいんだろう
今日もまた長い部活が終わった。あたしは一人で暗い夜道を帰ることにした。足が筋肉痛だ。痛い。テーピングもはがれてきてる。ああもう、なんかものすごく嫌な気分だ
「…あれ…?」
暗くてわからなかったけど、あたし今どこ歩いてるんだろう。なんだかいつもと景色が違う
「え、なにここ、どこ?」
もしかして迷子?あたしそんなに周り見ずに歩いてたかな
「…違う…」
迷子じゃない。まいごどころか、どうやらあたしはテレポートでもしちゃったのか
「…神奈川県…」
ふと見上げるとそこには横浜やらが書かれた標識があった。道に置いてあるバイクも神奈川と書かれている。あたしはさっきまで確かに東京を歩いてたのに
「…ここ、どこ?」