戻った
「よ、仁王」
「…名前は?」
「風邪〜」
「え」
ファミレスに一緒に行った次の日、丸井の隣に名前はいなかった。しかも風邪って。昨日別れ際に感じた違和感はこれか
「あいつ腹出して寝てるからな―」
「…帰る」
「え、おい仁王」
「真田には適当に言っといて」
サボるなら俺もサボると騒ぐ丸井を無視して俺は丸井の家に向かった。名前に会いにいくのはいいとして、丸井の母さんに会ったら何て言ったらいいのか
ピンポーン
「……………」
丸井の家のインターホンを押すが誰もでない。もしかして、名前一人?
ガチャ
ドアを開けてみたら開いた。鍵もしないで無用心すぎじゃろ
「…名前?」
返事がない。二階だろうか。確か丸井の部屋は二階だったはずじゃ。階段をのぼるといくつか部屋があった。一部屋だけドアが閉まっている。ここか
コンコン
「…名前」
「入らないで!」
返事はすぐに返ってきた。風邪にしては随分はっきりした声じゃ。
「名前、風邪大丈夫か?」
「え…雅治?」
「ああ」
「ごめん、ブン太が戻ってきたのかと思った。…入って」
なぜブン太は入ってはいけないのか。よくわからなかった。俺はドアを開けて部屋に入った。ベッドには布団に包まる名前が見えた
「名前、熱でもあるんか?」
「…………」
「顔だしんしゃい」
「…………」
名前は何も答えずに布団をはぎ、顔を出した
「え?」
いつもの、名前じゃない。同じ顔だけど、どこか大人びた…
「お前さん…名前?」
「朝起きたらね、体が元に戻ってたの」
「…ちょっと立ちんしゃい」
名前は黙ってベッドから起き上がり、俺の隣に立った。
背が、高い
「いつものちっこい名前じゃなか」
「これが本当の身長だって」
「なんで急に元に戻ったんじゃ」
「さあ」
「なんかしたんか?」
「いや……べつに…」
「なんじゃ」
「…………」
名前はそのまま喋らなくなり、再びベッドにもぐりこんだ
「…自分の家とか、お母さんとかお父さんのこと考えてて」
「…………」
「皆元気かなって」
「色々考えてたら悲しくなっちゃってさ」
「…で、起きたらその姿に?」
「うん」
どこか元気のない名前の姿に少し胸が痛んだ。最近元気そうだったから忘れていた。名前にとってこの世界は異世界で、たった一人で、ものすごく心細くて
「…名前」
「…ん?」
「大丈夫じゃ、名前には丸井だっておるし、俺もおる」
「……雅治、やさしい」
やっとにっこり笑ってくれた。すると名前の体が縮み始め、しばらくするといつものちっこい名前に戻った
「あ!体が…」
「またちっこくなったのう」
「うるさいな!ホントはもっと大きいってば!」
一体なんだったのかよくわからなかったが、とりあえず名前が元気になったから一安心じゃ