特別





あれから数日がたった。あたしはとりあえず奨学金制度のおかげで立海に入学することが許された。ブン太は毎日朝早く朝練にいくからあたしもくっついていくようになった。










「おい、名前いくぞー」
「ちょっとまって!」
「お前起きるの遅すぎだろぃ」









おかしいな。あたし早起きは得意だったはずなのに。体が小さくなったから寝たりないのかな。









「ほら、いくぞ」
「わっ」











ブン太はあたしの腕をとって走りだした。最近思うんだけど、あたしはブン太に妹扱いされている。本当ならあたしはブン太と身長も同じなのにな。悔しい










「お前体力はあるよな」
「だって陸上部だもん」
「前の学校でも陸上やってたのかよ」
「やってたよ」
「そういえば、お前のジャージなんで高校名書いてあるんだよ」
「え、あ、…あれお姉ちゃんの!」
「姉ちゃんいんの?」
「えーっと、姉ちゃんは頭よすぎて海外で飛び級して大学生やってるから」
「すげーな」









よくもまあこんなに嘘が出てくるものだ。私にはお姉ちゃんはいない。いたとしても海外で飛び級とかありえない。











「じゃ、俺テニスコートいってくるぜー」
「え」
「なんだよ」
「あ、もうついたのか」
「寂しいの?」
「ち、違うよ」
「ぷ、じゃーな」








ブン太はあたしの頭をポンポン叩いてテニスコートへ走って行った。この子供扱い、いやだなあ


























「お、仁王」
「………」
「おい、何無視してんだよ」
「別にー」
「名前ならちゃんと一緒に登校してるって」
「…あっそ」
「なんだよ」










眠いのを我慢して早起きして、学校についたかと思えば丸井が苗字の頭を叩いて楽しそうに笑っていた。なんか知らんけどむしゃくしゃする。しかも名前って呼んでるし。俺はまだ苗字で呼んで、苗字で呼ばれてんのに。ていうか最近苗字と話してない気がする。












「仁王?」
「うるさいぜよ」
「なんなんだよ」








むしゃくしゃしたから俺は丸井から離れてどこか別の場所へ向かった。とにかくイライラする。苗字に恋愛感情を持っているつもりはないが、なんだかイライラする














「仁王君?」


「…あ」











呼ばれた声に振り向くと、そこにはジャージ姿の苗字がいた。今度はちゃんと、立海のジャージを着ていた。










「おはよう、なんか久々だね」
「…そうじゃな」
「あれ?朝練は?」
「あー、…ちょっと頭痛くて」
「え、大丈夫?保健室行く?」
「いや、気にせんでいいぜよ」
「…そう?」






心配そうに苗字はこっちを見ている。こいつ、ちっこいのう。ホントはこいつは高校生で、背なんか丸井と同じくらいあって、それでこの世界の人間じゃなくて、そんなことを知っているのは俺だけだと思ったらなんだか少し安心した












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