運命の人
「おい仁王、もっと早く歩けよぃ」
「…暑い…」
帰り道、仁王と二人。今日も真田の厳しすぎる練習で体はボロボロだった。
「…そういえばさ、お前と名前って幼馴染なんだろ?」
「…おう」
「お前もっと構ってやんなくていいのかよ」
「…あー…」
仁王はなんだか暗い顔をしている。こいつ、本当にあいつの幼馴染なのかよ。ぶっちゃけ仁王が名前を引き取ってやればよかったのにとか思う。
「ただいまー」
「おかえり。…あら?」
「…なんだよ」
「名前ちゃんは一緒じゃないの?」
「…え」
母さんの言葉に一瞬体が凍った。名前はとっくの昔に家に帰ったはず。家についてないはずがない。寄り道でもしてんのか?
「…一緒じゃないけど」
「やだ、なんで一緒に帰ってきてあげなかったのよ」
「え、だってあいつが先に帰るって…」
「心配でしょ?行きはあたしが付いて行ったけど…ほら、早く探しに行きなさい」
「え、まじかよ」
俺は仕方なく外に出た。あーもう、つかれてんのに
・
・
「…はあ、ここどこよ…」
あれから何時間歩いたんだろう。ここは一体どこだろう
「…なんか、やばい…」
もともとあたしにはここは異世界。お母さんとお父さんどころか知り合いもいない。そんな中でせっかく出会ったのが仁王君とブン太。どうしよう、あの二人ともこのまま会えなくなって行っちゃうのかな
「…う」
そんなこと考えてたら涙があふれてきてすごく怖くなった。あたし、このままどうなっちゃうんだろう
「…苗字」
え
「…あ…」
「なにしとるんじゃこんなところで」
「…仁王、君…」
自分の名前が呼ばれる事がこんなに嬉しいことだっただなんて。しかもまた仁王君だ
「…仁王君だ…」
「…お、おう」
「…う」
「え」
「うあぁぁ、」
「お、おい、何で泣くんじゃ」
「う、うっ」
「ほら、鼻でてるぜよ」
「ぶっ」
仁王君は制服のYシャツであたしの涙と鼻水を拭いてくれた
「…いい人…」
「あたり前じゃろ」
「…あたしと仁王君って、何か縁があるのかもね」
「は?」
もう2回も仁王君に助けられたんだもん