あの時伝えておけばよかった






あたしは未だに裏山にきていた。たとえ千歳がこなくてもあたしにとっては絶好のサボり場所だ







「…つまんな」





なんにも楽しくないなあ。せっかくサボってるのに。なんだか涙がでてきた






「名前」








急に背後から聞こえた声に振り向くと、そこには千歳がいた。







「………わ…っ!!」
「驚きすぎたい。失礼なやつばいね」
「いや、だって久々だったから…」
「…あ〜、最近屋上でさぼっとったばい」
「…あ、そうなんだ」








しってるよ、だってあの子がいるからでしょ










「久々ばいね、この景色」
「屋上より涼しいのに」
「はは、そうたいね」








あたしの隣に座った千歳をちら見してみたら、千歳は景色を眺めていた。きれいな顔、ああもう、また胸が高鳴るよ









「…千歳はさ、これからもここくるの?」
「…ん〜…時と場合によるばい。ばってん、」
「…?」
「もうそう何回もくることはなかよ」
「え………」








一瞬時が止まったように感じた。胸が痛くて死んじゃいそうになった。この裏山はあたしと千歳の場所なのに、ここがなかったらあたしは千歳と何にも関係ないのに












これからどうやって千歳と関係をもてばいいの?










「…じゃ、そろそろいくばい」
「え、もう?」
「ああ、部室行って来るたい」
「………わかった」











もっと千歳といたかった。でももう無理だ。これからは千歳もこの裏山にはこないのだろう。屋上で彼女と一緒にいるのだろう。ああ、こんなことなら、








あの時伝えておけばよかった
もう伝えることもできなくなるのかな

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