あたしは遊女じゃない




「ほい、ジュース買ってきたで」
「ありがと」






結局俺はまた屋上に出入りするようになった。自分でも自分がよくわからない。何をしているのだろう、自分は











「なあ、あの男大丈夫やった?」
「白石君が妨害したおかげでもう大変よ。殴られるしわめかれるしで」
「…え、それほんまなん?」
「うそ」
「………」
「ま、適当にごまかしろいたから大丈夫」
「そか…すまん」





何謝ってるん自分。









「……苗字さん」
「名前でいいよ」
「…名前」
「何?」
「いままでどれくらいのやつとセックスしたん」
「…普通それ聞く?」












スマン、というと彼女は少し笑って前を向いた










「…さあ、覚えてない」
「…お前は将来AV女優にでもなる気なん」
「まさか、ちゃんと違う形で社会貢献するわよ」








こんだけ頭よけりゃな、道は多いだろう














「じゃ、そろそろ行くね」
「え、どこに」
「裏山」
「まさか」
「うん、お仕事」
「お前…アオカンはやめえや」
「仕方ないでしょ、屋上だとのぞきに来る誰かさんがいるし」
「………」























「んっ…」
「は、気持ちい?」
「……ぅん」








気持ちくない。見ればわかるだろう。挿れればわかるでしょ。何にも濡れてない。痛いだけ。この人、今までの中でも一番セックスが下手だ










「…ありがと、またね」
「…ん」









そっとあたしの手に封筒を入れて彼は立ち去る。中には一万円が入っていた。先払いか。なんて変態なんだろう。そしてあたしも十分変態か











「…白石君…」









なぜか彼の顔が頭に浮かぶ。今日はのぞきに来なかったな。別にみてくれてもいいけどね。










「…………」


















「え…何しとるん?」
「待ってたの」
「え」
「待ってたの」
「な、なんで」
「…さあ、わかんない」







自分でもよくわからない。どうして彼を待っていたのだろうか。部活が終わって、少し疲れた顔をしている白石君。外はもう真っ暗だ












「…帰れる?」
「あ、ああ。ええけど」
「…いこ」
「なあ、自分疲れてへん?」
「…お腹が痛いの、ほっといて」
「…原因って」
「ほっといてっていってるでしょ」





じゃあなんで白石君をまってたんだ。理不尽な自分に嫌気がさす









「…なあ、もしかして、」
「………」
「お前ちゃんとゴムつけとるん?」
「つけてるよ、妊娠なんてしてないからご安心んを」







ただ、さっき無理やりぶち込まれてひりひりするだけだ。もう、なんか泣きたい












「……ねえ、」
「ん?」
「あたしが泣いたら、白石君はどうする」
「…………」
「…慰めてくれる?」
「…理由によるな」
「だよね」










好きじゃない奴とお金をもらってセックスをして、痛くて泣いてるなんて誰が同情するものか。








「…なあ」
「ん」
「俺がお前の客になったら、どう思う」
「…え…」
「な、だめか?」
「うん、だめ」
「え」






白石君は驚いた顔をした。









「そんなの絶対だめだから」



客を断る遊女なんていないよ





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