金じゃない
しばらく屋上にいくのはやめた。苗字さんは相変わらずクラスでは優等生を気取っていた。この子が裏ではセックスしまくっていると考えたら頭が痛くなってきた。
「わ、苗字さんほんまに頭ええな」
「え?」
謙也の声に振り向くとそこに定期テストの上位者が張り出してあった。数学はやはり一位は小春。だけどほとんどの科目に苗字さんは1位か2位
「…ほんま、すごいやっちゃなあ…」
「は?」
「なんでもない。さ、部活いこか」
アホ面をしている謙也を置いて俺は部室へと歩き出した。どこの部活も練習の準備を始めている。そういえば苗字さんて何部なんやろ。思えば俺は彼女のことを全く知らない。他の人が知らないことは知ってるのに
「…あ」
階段を下りると、廊下に苗字さんを見かけた。彼女はそのまま俺には気づかずに、屋上へと続く階段を上って行った。また、誰かとヤるのか。何でこんなにも、気になるのか。ただの野次馬になる気は全くないのに
「すまん謙也、俺ちょっと保健室いってくる」
「は?」
カバンを謙也に押しつけて、俺は苗字さんの後を追った。行って何をする気だろう。また気分を悪くするだけなのに
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遅かった。もう少し早く行っていればよかった。屋上から聞こえる、苗字さんのあえぎ声。いや、男の声の方が多い。気持ち悪い奴やな。女があえぐからええねん。ってそんなことはどうでもええ、
「…あ、…んっ」
彼女は元々そんなに喘ぐ方ではないのかもしれない。むしろ彼女は何も気持ちいと思っていないのではないか。ていうか
好きじゃない奴とのセックスは気持ちいのか
バン!
「…え!?」
「……!」
男の方はひどくおびえた様子で俺のほうを見た。血相を変えてズボンをはきなおし、下を向きながら去って行った。ズボンの上からでも勃っているのがよくわかる。あんなおとなしそうな顔しといてただの変態や。ほんまに人間てようわからん
「…営業妨害しないで」
「……すまん」
「何?人のセックスを除くなんて悪趣味よ」
「……なあ、お前気持ちいいん?」
「え?」
「好きじゃない奴とセックスして、気持ちいいんか?」
「…………」
彼女は表情は変えずに黙った。そのままスカートを上げて制服をただし、彼女も俺の横をスっと通る
「…あたしは感じるためにこんなことしてるんじゃないの」
「…じゃあ、金か」
「………」
「…なあ、金なら俺がやるし、こんなことやめん?」
俺、何いうてんねやろ。あほか。口で言ってることと頭の考えが一致していない。どうして、こんな気持ちの悪いことをしている女に金の援助なんかをしなければいけないのだろう。
「……いらない」
「え」
「あたしはお金がほしいんじゃないの」
そう云った彼女の顔は相変わらず無表情のままだった