男だって嫉妬するんだよ


「鯉伴様!今夜は逃がしませんぞ!罰として一週間は外出禁止令を出します!」

「はぁ!?誰がんな事決めたんだよ!」

「総大将と話し合いで決めました!」

「…親父め…」

「鯉伴様。これは貴方のためでもあるのですぞ」

「…」

「貴方はいずれこの奴良組を継ぐお方…それなのにいつまでも夜遊びなどしておられては困るのです」


…そう言われても光と約束したってのに…

明日も来るって…それなのに行かなかったら約束を破っちまう。どうにかして抜け出さねぇと


「おっと!言い忘れておりました」

「?」

「抜け出そうとしても無駄ですぞ!外には多数の妖怪を配置しておりますので!」

「どんだけ用意周到なんだよカラス天狗」

「残念。これも総大将の案でございます」

「…」


もう言葉も出ねぇや

どうすりゃあ良いんだよ………こうしてある間にも時間は過ぎて気が付くと既に一時は過ぎていた

…そうだ、便所に行くっつって抜け出すか。よしそうしよう


スゥ

「鯉伴様!どちらへ!」
「便所だよ便所」

「では私も」

「良いって。便所ぐらい一人にしてくれや」


何とか抜け出せた…さて、どうすっかなぁ

きっと玄関にはカラス天狗が待ち受けているだろうから……


「おい。総大将誰と話してるんだ?」

「ほら、"ホタル妖怪の光"だよ。帰ってきたんだよこの土地に」

「えぇ!?あの五十年前違う土地に行っちまった光かい!そりゃあ総大将も喜ぶ筈だ!」

「そういやぁもうホタルの季節だもんなー」

「おい。今光って言ったか?」

「鯉伴様!はっ!言いましたが」

「…有難うな!」

「「?」」


光が家に居る…しかも親父と一緒に話してるなんて…!

ずりぃ…俺だって光と話してぇのに

丁度親父の部屋に近付いたとき、親父の部屋から光と親父が出てきた


「光。本当に泊まらなくても良いのか?ワシ等は別に良いんだぜ?」

「お気遣き有難うございます…ですが…皆が待っているので」

「そうか…しかしもう五十年か…早いな」
「そうですね…」

「違う土地ではどうだった?」

「川は綺麗でしたが…やはり、此方の場所が一番落ち着きます。やはりぬらりひょん様が居るからでしょうかね」

「かっかっか!嬉しい事言ってくれるじゃねぇか」

「ふふ」

「…」


正直…出て行く隙がなかった

親父と話す光は楽しそうで、親父も楽しそうで…

気が付くと隠れて床に腰を下ろして親父達の話を聞いてた

…所詮、俺と光は出会って二日しか経ってねぇ。五十年前に出会った親父には敵わねぇってかい?

光の表情見りゃあ分る…俺の時には見せねぇ表情を親父には見せてるもんな


「鯉伴様ああ!あれ程お部屋から出るなと言ったのに!」

「家ん中ぐらい自由にさせてくれ…ってカラス天狗シーッシーッ!」

「…おー馬鹿息子。良い歳こいて盗み聞きか?ん?」

「…んな事ねぇよ。たまたまだよ」

「鯉伴様。お屋敷に居られたんですね」

「光…悪ぃな、行けなくて」

「いいえ。鯉伴様にもご事情があったんですよね…私は大丈夫ですよ」

「光。コイツは単なる夜遊びのし過ぎで今外出禁止令出してんだよ。んな大した用事とか鯉半にねぇから」

「おい親父。変な事光に言ってんじゃねぇよ」

「ふふ」

「双方共、喧嘩は対外になされを」


光の前でかっこ悪ぃ所見せちまった

親父め…


「それでは鯉伴様、これからは私が此方へ出向きます」

「え…良いのかい?」

「勿論…そうでしたら夜皆様にご心配されるような事はありませんよね」

「光…お前ぇは良い女だなぁ。こんな馬鹿息子のため…」

「よし、光今夜は泊まってけよ?もれなく俺の添い寝が付いてくるぜ?」

「おーい。お前は何ドサクサに紛れて変な事言ってんだよ」

「ふふ…それはまた今度」

「えーじゃあ泊まってくよな?ここで会えたんだし光ともっと話てぇな」

「また鯉伴様の我が儘が始まりましたね」

「我が儘じゃねぇし」


やっぱ光と話してると一番落ち着く…ずっと一緒に居てぇや

このまま離れずにずっと…







「…鯉伴の奴もしかして光の事気に入ってねぇよな?」

「そのようにお見えしますが…如何しましたか?総大将」

「カラス天狗…何とかして光の事を諦めさせるんだ」

「は?」

「…もう既に、光の寿命が少ねぇんだよ…一週間もねぇんだ」

「なんと…!」

「このままじゃあ鯉伴は悲しむだけだ」