また違い夜の世界



ジャリ

「だーれだ」

「…ふふ…その声は鯉伴様しか居ません」

「んー…じゃあもうちょっと声低くすりゃあ良かったな」

「どんなに低くしても鯉伴様の声だと分りますよ」


正直嬉しかった

どんなに変えても俺だと分かってくれる


「鯉伴様」

「ん?」

「夜にお屋敷から出て大丈夫なんですか?」

「毎日の事だからな…ま、帰ったら親父やカラス天狗に怒鳴られっけど大丈夫だ」

「…本当に?」

「本当」


「おーい…誰かうちの馬鹿息子知らねぇかー?」

「…また出て行かれたのですか。鯉伴様は」

「ったく!あいつは一体誰に似やがったんだよ!ワシは夜遊びする子に育てた覚えねぇぞ!」

「あら、総大将も同じ歳の時は夜遊びばかりしてたわよ…あら、ホタル」

「ほう…もうそんな季節なんですね」

「ホタル……か」


今夜こそは光がどんな妖怪か聞いてみるか「光」

「はい?」

「お前ぇは何の妖怪なんだい?」

「…知りたいですか?」

「知りたい。凄ぇ知りたい」

「そんなに?」

「教えてくれたらもれなく俺とでぇーとが出来るぜ?」

「ご遠慮しておきます」

「おいおい即答かよ」


いくら俺でも即答されたら傷つくんだけどな

でも光の笑った顔が見られるのは悪くない。冗談じゃねかったんだけど言ってみるもんだ


「…私はホタルの妖怪です」

「っ、ホタル?」

「えぇ……っ」

「どうりでお前ぇは綺麗だと思った…なるほどホタルなら光が綺麗なのも分るぜ」


綺麗な長い髪は触れるとサラサラだった。肌も透き通るように綺麗な肌だし

悪ぃところなんてひとつもない…やばい、惚れる

…あ…でも、ホタルは儚ぇから……


「光」

「はい?」

「お前ぇもこのホタル達と同じで儚ぇのか?」

「…」

「こいつ等と一緒で10日…だなんて言わねぇよな?」

「ご安心ください。私はこれでも50年も生きています」

「50年もって…俺達妖怪にとっちゃあ50年"しか"生きてねぇじゃん」

「でも我々ホタルにとっては50年なんて凄く生きていますよ」

「そりゃあそうか」


確かに妖怪じゃあ50年"しか"だがホタルにとっては50年"も"なんだな

じゃあ光は他のホタル達よりも世界を見てきたんだ


「鯉伴様、そろそろ戻らなければ皆様がご心配しますよ」

「もっと光と話してたい」

「また明日お話しましょう?」

「嫌だ…まだ夜は始まったばかりなんだから良いじゃねぇかい」

「我が儘はいけません」

「我が儘じゃねぇよ。俺の正直な気持ち」

「鯉伴様」

「んー?」

「どうしてくっ付いているんですか?」

「こうすりゃあ離れられねぇだろ?」

「…あともう少し、ですよ」

「おう」


温かかった…誰かの温もりってやっぱ良いな

光の温もりは落ち着く


「俺光と話せるなら夜遊びやめる」

「…?」

「俺の話し相手になってくれねぇかい?光」「……喜んで」


優しく薄らと見せた微笑みを俺ぁ忘れねぇ









「くぉらああ鯉ー伴ー!今までどこほっつき歩いてたんだ!」

「…おー!納豆小僧。お前ぇまた納豆出てるぞー」

「シカトすんな!誰かその馬鹿息子を捕まえろ!」