信じたくない




「珍しいですね。鯉伴様が昼間に私の所へ来るなんて」

「駄目だったかい?」

「いいえ…そんな事はございません」


親父の顔見たくなくて昼間っから光の所へ来た

昼のせいか光が少し元気が無さそうに見えたから申し訳なく思えた


「悪ぃな光。昼間っから無理させちまって」

「え?」

「光ホタルだもんな。ホタルは夜の虫だから昼間苦手なのに俺に付き合ってくれて」

「…」

「…光?」

「ぁ、いえ…鯉伴様。私は妖怪なので昼でも大丈夫ですよ」


あれ?そうだったのか…?

じゃあ…なんで元気ねぇんだろう…どっか具合が悪いのか?


「光、具合悪ぃのかい?」

「どうしてですか?」

「なんか…元気ねぇみてぇだし顔色悪ぃ」


触れた頬は少し冷たくて思わず抱きしめた

こんなに温かくて優しい温もりなのに…


「鯉伴様…どうかなさいましたか?今日はやけに甘えますね」

「甘えてんじゃなくて心配してんの」

「ふふ、ご心配有難うございます。ですがどこも悪くないのでご安心ください」

「そうかい?なら良いんだ」

「…ぬらりひょん様と何かあったんですか?」

「え」

「鯉伴様の方が元気がありませんよ」

「光…」


例え親父に反対され続けても俺は光が好きだ

光と一緒になりてぇ…


「俺…光の事が好きだ」

「えっ」

「例え親父に反対され続けても俺の想いは変わらねぇ…俺、光と一緒に生きていきてぇ」

「鯉、伴…さま」

「光。俺の妻(オンナ)になってくれねぇかい?」


この時光は「はい」と返事をしてくれるかと思った

でも俺の期待してた返事とは逆に……


「…申し訳ありま、せん…鯉伴様」

「っな、なんで…俺じゃあ不服って事かい?」

「違います!私も鯉伴様が好きです」

「じゃあ!」

「ですが!…このまま私と居れば鯉伴様は悲しんでしまいます」

「悲しむ?俺は光が居てくればそれだけで十分なんだ。光さえ俺の傍に居てくれりゃあ幸せなんだよ…!」


逃げようとする光を強引に抱きしめながら言った

親父との事で気ぃ使ってんならそんなのいらねぇ

俺は光が傍に居てくれれば良いんだ


「鯉伴、様…離して、ください…!」

「嫌だ」

「鯉伴様…!」

「俺が納得する理由聞かねぇと離さねぇ」

「っ……」


急に光が俺の着物を掴んでいた手に力が入った

…やっと分って…


「鯉伴様…私は……もう一週間ぐらいしか生きられません」

「え」

「だから…私と一緒にッなっても、鯉伴様が悲しむだけ…」

「何、言ってんだい?…お前が…あと一週間しか生きられねぇ?」


頭が真っ白になった。全然整理がつかず、只混乱するばかり

嘘だよな?光は妖怪なんだぜ?俺等と同じ、もっと長くッ


「嘘、だよな?」

「…嘘ではありません」

「そんなのッ信じろって?…出来るわけ!」

「鯉伴様…私は何の妖怪、ですか?」

「…ホタル…」

「ホタルは元々長くは生きられません…例え妖になったとしても…」


…じゃあ…親父が反対したのは…

光の寿命があと少しって分ってて…俺に悲しませないように…?

そんなの…大きなお世話だっての


「私は、鯉伴様の悲しむ顔は見たくないのです…だから」

「嫌だ」

「え?」

「このまま光が死ぬなんて俺ぁ嫌だッ」

「鯉伴、様」


何か方法はある筈だ

みんな探さねぇだけできっとある筈だ

俺が探す


「光待ってろ」

「、」

「俺が必ず見つける…お前がもっと生きられる方法を」

「鯉伴様!」

「絶対見つけて戻ってくるからな!それまで光も諦めずに待っててくれや」

「っ!」

「それが終わったら俺と一緒になろう、な?」

「ぅ…ッ、」

「おいおい泣くより返事は?」

「…は、い」

「俺が絶対にお前を死なせない」


誰だって幸せな最後を夢見てんだ

それを叶えるためにみんな頑張ってる

だから俺も頑張るんだ。光と一緒になるために

それが、惚れた女のためにしてやれる事だろ?

惚れた女を守るのが男の役目だかんな









「…みんな…」

フワァ

「鯉伴様、本当に大きくなったね…私が長く生きられる方法を見つけてくるですって…こんなに幸せな思い私して良いのかな?」



でも俺はまだまだ餓鬼だ

考えが甘かったんだ


なぁ光

もし俺がもっと大人になってたら、何か考え変わってたのかい?