時が経ち、






「おぉっ凄ぇな!」

「こんなにホタルを見たのは初めてだ」

「まぁ…雪麗さん凄いですね」

「そうね」

「…何見てんだい?」

「二代目!ホタル凄ぇですぜ!」

「っ」


青田坊に言われ庭に目をやると、沢山のホタルでいっぱいだった

また親父だな…


「綺麗ですね」

「…あぁ。綺麗だな」


今の俺には山吹乙女という妻がいる

青田坊や首無、毛倡妓…沢山の仲間も居る

…人差し指を前に差し出せば一匹のホタルが止まった。俺はどうしてもそいつが光に思えたんだ


「…光…」


立派な奴良組が今ここにあるぜ

お前との約束…叶ったかい?


「二代目」

「ぅおっ!…っと、首無。なんだい?顔だけ近づけて」

「"光"って誰ですかい?」

「…」

「二代目ェ。山吹乙女様という妻が居るっつーのに普通に女の名前出すたぁ頂けませんぜ?」

「おいおい、なんなんだよこの空気」

「…」

「二代目が白状したら良いんじゃないですか?」

「白状って?」

「あーらトボケちゃって」

「なーんもねぇよ。雪麗さん、腹ぁ減った。飯にしようぜ」

「はいはい」


俺は逃げるようにその場を去った

光の話しちまうときりねぇからな…




「…雪麗さん」

「?…あらやだ乙女ちゃん!勘違いしなくても良いわよ。只の昔話なんだから」

「昔話?」

「そうよ。まだあんた達が奴良組に入る前の…そう、鯉伴が二代目就任になる前の話よ」

「…」

「…」

「うちにね、ホタル妖怪が居たのよ…光っていう子がね」

「どういう関係だったんです?」

「まぁ恋仲と言えば恋仲だけど、周りから見れば親子とも捉えられる関係ね…鯉伴の初恋の相手よ」

「でも二代目そんな事一言も」

「そりゃあそうよ。中々話したくないものよ…ま、詳しくは鯉伴から聞くのが一番なんだけどね――――」


























「…貴方」

「よう山吹。まだ起きてたのかい?」

「…雪麗さんから、光さんの事お聞きしました」

「……そうかい」

「すみません。勝手に」

「良いって。別に隠す事もねかったし……隣座るかい?」

「はい」


今は山吹が大切だと思ってる

今の俺が居るのは、光のお陰だ

きっと…俺と山吹の事、喜んでくれてるよな。光


「俺も早く話せば良かったか…」

「え?」

「そうすりゃあ山吹が落ち込む事もねかっただろうし」

「そんな事…ありません」

「、」

「雪麗さんから聞きました。貴方にとってとても大切な方だった事…そのような方の事を簡単に話せませんもの」

「山吹…」


山吹は優しいな


「光が居たから、今の俺が居るんだ」

「?」

「あん時の俺はまだ餓鬼で奴良組の事なんか考えてなかった…只、只、光の事だけ考えてた」

「…」

「でも、そんな俺を変えてくれたのも光だった…自分の事よりも俺の事を考えてくれて…」

「では…光さんが居なければ、私と鯉伴様はお会いになれなかったのですね」

「っ…あぁ。そうだな…光が居てくれたから山吹と一緒になれた」


光、またずっと俺の事見ててくれ

俺もっと奴良組を強くして…それで山吹と一緒に、仲間達と一緒に賑やかな組にしてみせるから

光…お前と出会えて、好きになれて本当に良かった

有難う…光――――








「光ー!」

「…鯉伴様」


END.