「どこか悪ぃのかい?」

「い、いえ…その…」

「?」

「…椿ちゃんの、お見舞い…に…」

ピクッ


あんな酷い事言っちゃって今更謝りたいなんて都合良過ぎかもしれないけど謝りたい

私の勘違いで…もし、私がちゃんと椿ちゃんの話を聞いてあげていれば椿ちゃんは落とされずに済んだかもしれないのに…


「椿…友達だったのか?」

「…はい。でも…」

「?」

「私…椿ちゃんに酷い事言っちゃって…椿ちゃんが階段から落とされたのも、私のせいだし…」

「…椿を落としたのは、お嬢ちゃんか…?」

「っ…ち…違いますっ!!」


真面目で冷たい表情の若を見て一瞬怖かったけど、でも私は否定した

私は落としてない…そう信じてほしかった。嫌われたくなかった

数秒間沈黙が続いた時、若が何故か私の頭に手を乗せて優しくなでてくれた


「知ってる」

「え?」

「お嬢ちゃんがそんな酷ぇ事するような子じゃねぇって事ぐらい知ってる」

「若…!」

「椿の見舞いだろ?あいつ喜ぶだろうな。友達が来てくれて」

「…っ…うっ…!」


若の目は完全に私を疑っては居ない目だった

それが嬉しかった。精市達は半信半疑な目で私を見てた…でも若は違う…

謝らなきゃ…若にも…


「ごめんなさい」

「今度はどうした?」

「私…若と椿ちゃんが兄妹だなんて知らなくて…椿ちゃんに酷い事言っちゃったんです」

「…」

「以前、若と椿ちゃんが楽しそうに笑って歩く姿を見て…勘違いして、椿ちゃんに若を取られたんじゃないかって…思って…」

「…」

「私…女の子の友達居なくて、でも椿ちゃんには沢山居て…私椿ちゃんが羨ましくて…だから…嫉妬、してたんだと思うんです」


こんな嫉妬、見苦しいって分ってる…でも私は椿ちゃんに嫉妬をしてた

マネージャー業を一緒にやって、椿ちゃんがファンクラブの子に呼び出しされてるのも分ってた。でもその後は必ず友達が回りに居た。私には精市達だけしか居なかった

そんな彼女が羨ましかった。私と椿ちゃんどう違うのとかさえ思ってしまうほど


「今回の事も…私自分しか見てなくて…椿ちゃんに酷い事言っちゃって…きっと椿ちゃんは私を探しててくれてたんです…もし、私が椿ちゃんの話を聞いていればこんな事には…ごめんなさい…!」

「確かにお嬢ちゃんにも悪い部分あんな」

「…」

「でも…お嬢ちゃんは素直で良い子だ」

「え…?」

「誰にだって失敗する事はある。間違った道に進む事だってある。でも…人間はその失敗を背負って成長するんだ」

「…」

「お嬢ちゃんは自分の間違いをそうやって理解できてんだ…きっと、良い事あるぜ」

「…っ」

「だからそんな自分だけが惨めな思いしてるんだっつー顔すんなよ。誰だって一度や二度惨めで苦しい思いすんだ…な?」

「っ…っく…ごめ、なさい…ごめんっなさい…!」

「もっと沢山周りを頼って生きろよ。何でもかんでも自分で出来るなんて思わねぇで…人間は助け合って生きてんだから」

「うっ…わたっし、虐めっられてて…どうした、ら良い、ですか…?」

「んなもんやり返りゃあ良いじゃねぇか。虐めっつーのは弱いもんにしかやらねぇだろ?だからお嬢ちゃんがやり返せば相手なんて驚いてすっ飛んで行くぜ?」


若の優しくて温かい言葉で涙が止まらなかった

誰もそんな事を言ってくれる人はいなかった。私がファンクラブの子に呼び出されて怪我しても「守ってあげる」としか言われなかった。「言い返せ」とか「やられっ放しじゃなくて言い返せ」だなんて言ってくれなかった

嬉しくて嬉しくて…嗚呼若って本当に良い人。だから商店街の人達にも好かれるんだね


「わああああ!若が女の子泣かしてるうううう!?」

「わああああ!誤解だああああ!」

「…」


突然現れた着物姿の男の人が叫びながら行ってしまうと、若も慌てて連れ戻して訳を話してた

その人は話を聞くとホッと胸をなでおろして


「なんだ…若に見境が無くなっちまったのかと思いやしたよ〜」

「…お前は本当早とちりな奴だな…」

「で?このお嬢さんは?」

「椿の友達。見舞いに来てくれたんだよ」

「あれ?でも若面会謝絶にしてるんじゃないんですか」

「…あーんなもんしてたな」

「…め、面会謝絶…って?」

「気にすんな。もうそれ止めにする。眞澄言っといてくんね?」

「分りやした」


椿ちゃん重症だったって事?

不安に思ってると若に「心配すんな」って言われたけど不安になる…

二人で椿ちゃんの病室へ行くとなんか数人が外でもめてた


「ねー京次郎君。中に入れてー」

「…いけません」

「椿ちゃんにこんな素敵な花束をお見舞いに持ってきたのに…!」

「…此方で、預からせて貰います」

「駄目!私が直々に手渡す!」

「…はぁ…またあの人は…」

「?…?」

「冬史郎さん」

「あっ竜ちゃん!面会謝絶ってどういう事?そんなに私に椿ちゃんを会わせたくないのか!」

「ないねっ!!」

「ぐさっ…即答はないでしょ…」


なんか女性のように綺麗な顔立ちで髪長いけど…声は男…男?

その人は必死に若にしがみ付いて「椿ちゃんに会わせろ」と強請ってる
「しつこいっすよ冬史郎さん…つか、アンタ検査の時間じゃないんですか?」

「ふふふっ今日の検査は終了済みでね…だからこうして」

「ちっ」

「…年上の前ででかい舌打ち止めない…?」

「…」

「あ…竜ちゃん。この可愛い子誰?」

「へっ…!?」


視線が合ったかと思えば若に私の事を聞いたから驚いた


「あーそのお嬢ちゃんは椿の友達でお見舞いに来てくれたんすよ」

「へぇ…椿ちゃんお友達いるみたいで安心した…私は徳江冬史郎。よろしく」

「ぁ…よ、よろしくお願いします」

「竜ちゃん。この子名前なんて言うんだい?」

「………あ、やべっまだお嬢ちゃんの名前聞いてなかったな」

「あっ」

「えええ!まだ聞いてなかった!?馬鹿な若造」

「うっせ」

「くすっ…私、日向詩織って言うんです」

「竜ちゃんは、桜田竜輝って言うんだよ〜。気軽に竜ちゃんって呼んでね」

「…止めてほしい…」


そっか。若の名前桜田竜輝って………………ちょっと待って

桜田竜輝って…桜田って………関東を仕切るあの、やくざの桜田…!?

じ、じゃあ…みんなが若って呼ぶのは………


「どうした?」

「…ぁ……っあ…!」

「?」

「……ま、せん…」

「「?」」

「すみません!時間をくださいいいいい!!」

「「…(ポカーン」」


桜田組の若頭って事!?

私…やくざの人を好きになっちゃったって事なの!?しかも椿ちゃんは若の妹だからやくざの娘って事!!?

どど、どうしよ…!だ、誰にそ、そ、相談…!

私こんな時に相談する相手もいないなんてえええ…!!









「…私、いけない事言っちゃった…?」

「…かもしれないっす…」

(ふ、二人が真っ白に…!)



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すみません。またもや詩織ターンと…
どうなるんだろ…←
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