見たくなかった




「……兄さん…」

「…何も言うな。妹よ…」

「…でも」

「…全てはお兄ちゃんが悪い…」

「……お兄ちゃんだけは止めて…気持ち悪い」

「仮にも若頭に向かってそれは酷くないか?」


今日は休日だけど、朝から大変だった

兄さんまたキャバクラ行った事が慈雨さんにバレてしまって慈雨さん激怒。確かにね、兄さんが悪いと思うよ私も

兄さん優しいからキャバクラの人達に来い来い言われたら行っちゃうけどさ。私も行った事あるけど

でも一ヶ月に何回も行くから慈雨さんも怒っちゃうんだよ。それで罰として買い物任された兄さん。私は巻き込まれました


「別にな?俺はさキャバクラとか本当は興味ない訳だよ」

「うん」

「でもよ。そこの子達が来い来い煩いから行ってるだけでさ…慈雨は神経質になり過ぎてんだよ。こういうのはお付き合いとして見てくれりゃあ良いのによ」

(慈雨さんは只嫉妬してるだけなんだよ。少しくらい分ってやりなよ)

「……と、話は変わるが」

「?」

「お前…部活は本当に園芸部なのか…?」


ドキッと胸が高鳴る。これは好意を寄せた相手が何かした時のとはまるで別。怖かったから、それだけ

やっぱり…聖さんと切原君が会っちゃいけなかったんだ

私は内心焦りながら「園芸部だよ」と答えた


「…そうか。それなら良い」

「…」

「あと」

「?」

「園芸部ってそんなにハードなのか?最近怪我して帰ってくる事多いよな?…椿…」


これもまたドキッと飛び出る程心臓が跳ねた

最後の私の名前を呼ぶ声が低くて仕事の時の兄さんの声だったから恐怖さえ感じた

嘘をついてることがバレたらまずい。そう思い私は必死に誤魔化した


「え、えっとね…園芸部と言ってもね?世話は花だけじゃないんだよ!」

「は?」

「実は野菜も育ててね?これがまた威勢が良くて毎日やられっぱなしでね、あははは!」

「…な、何育ててんだよ…」


兄さんはこういう所が抜けてるから安心する

こうやって何回免れた事やら



日向side―


「精市。買い物付き合ってくれて有難う」

「丁度暇だったしね。何買うんだい?」

「新しい服買いたくて」

「じゃあ俺も手伝うよ」

「有難う。精市はセンス良いから助かる!」


今のうちに可愛く磨いておけばきっと若は振り向いてくれる

椿ちゃん応援してくれてるし!頑張らなきゃ!


「ふふ……………あれ」

「どうしたの?」

「……あ、れ…」

「?……あ」


数メートル離れた先のお店に居る二人。見覚えがあると思えば椿ちゃんと…若だ

なんで?なんであの二人が一緒なの?なんであんなに楽しそうに一緒に歩いているの!?

椿ちゃん…応援してくれるって、言ったじゃない…!


「っ」

「詩織…」

「…椿ちゃんってさ、何でも持ってる、よね」

「え」

「私のないもの全部持ってる…っ友達だって、ファンクラブに呼び出されても友達が居る…!私の好きな人だって簡単に振り向かせちゃう!」

「…っ」


なんだかもう悔しくて悔しくて今まで溜めてたものが全部出た気分になった


「なんで私だけなんだろうね!私頑張ってるのに!クラスだって友達出来るように頑張ってるのに誰も私を輪に入れてくれない!いつも味方は精市達だけ!好きな人だって振り向いてくれないし!」

「詩織…」

「でも椿ちゃんは違う…友達だって多いし私の好きな人あぁも簡単に振り向かせちゃう!…私と椿ちゃん何が違うの!?」

「、」

「そりゃあ椿ちゃんの方が大人しくて可愛いよ!?でも私だって可愛くなるようにずっと頑張ってきた!なの、に…!」


涙が止まらない

信じてた子に好きな人取られて、悔しくて悔しくて!


「あれ?確か幸村と日向さんやない?二人して突っ立って何しとるん?」

「…宝月さん」

「、日向さんなんで泣いとるん?」

「…宝月さん、近藤さん見た目以上に性格悪いよ」

「え?」

「…詩織の好きな人、応援するって言っておいて普通に取るんだから」

「なっ椿はそんな事する子やない!」

「どうだかね…君にも猫被ってるかもしれないよ…詩織行こう」


精市は泣いてる私の背中を優しく置いて歩かせてくれた

でも宝月さんに向けられた声はとてもつめたかった


(詩織を泣かせる奴は…許さないんだ……好きだから)


もう嫌だ

誰も私を見てくれない…どうして良いかもう分らないよ










「…椿……と、なんであいつと居るんや?…そっか、そうなんやな。椿。アンタやったんやな」


宝月舞は二人を見つめたまま薄く笑い


「なんや日向さん誤解しとるやん…せやけどえぇ収穫できたわ。やっぱここに来て間違いじゃなかった…ウチは親父と違うんや――」
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -